ニュートンの林檎 上 (集英社文庫)
ニュートンの林檎 上 (集英社文庫) / 感想・レビュー
遥かなる想い
辻仁成という作者は、破滅的なもの・突き進む情念のようなものを描かせると本当にうまい、と今でも思う。野性的な少女・佐伯元子との出会いから、情熱がほとばしるような行動まで、一気に楽しませてくれる。本の中での 存在感もあって、夢中になって読み終えた。
2010/05/19
みも
人は大なり小なり人から影響を受ける。たとえそれがバッド・インフルエンスだとしても。鋭敏で強烈な個性は凡庸な感覚を麻痺させ、理性を破壊しささやかな抵抗力を根こそぎ奪う。あたかも四方から伸びる蔦が手足を絡め捕り、泥の底無し沼に引きずり込まれるように。豊富な語彙、的確な形容、斬新な比喩、濃密な心象。作品のそこかしこから迸る才気。堅実な生き方を唾棄すべきものと断罪し、今までの価値観を根底から覆しかねない魔性の力がそこにはある。そして、凝縮されているのは紛れもない純文学のエキス。淫靡で鮮烈な印象を引き摺り下巻へ…。
2018/09/21
chie
退廃的な世の中に抗う様に生きる女性、佐伯元子に出会い魅了されていく主人公が、彼女の人生に巻き込まれていくという物語。波乱万丈でドラマチックな人生は、それを魂レベルで望んだ人に与えられるものなのかもな~と思う。逆に言えば、自分の魂が何を望んでいるかは、自分の人生が教えてくれる。佐伯元子には、私も憧れてしまうけれど、実際生きていくには、平凡であることがいかに楽かと思ってしまう。とは言え、下巻も読まずにはいられない。
2022/02/20
よしみん
まるで運命に導かれるように元子と出会ってしまった僕は、彼女と引換えに自分の人生全てを入れ替えられてしまう。常識を覆す思想が包む日常の中で、事件は起こる。自分と180°違う価値観を前に人は何を思うんだろう。それはある意味で人生を変え、行く道を広げ、人と違う何かを得ることだ。でも知らなければ、穏やかで幸せな日々がそこにはあったはず。登場人物の誰にも共感はできないが、僕と元子の行く末を静かに見つめたい。下巻に続く。
2012/08/06
晴れ女のMoeco
一人との出会いが、人生を変えてしまう。で、その一人とは何も恋人や配偶者とは限らないし、過ごした時間の多さで決まるわけでもない。林造との出会いはまるで、冷静~の順正と祖父の関係を思い出すな。というかイタリアも出てきたりして、冷静~を思い出す。だが、あれほど綺麗な話だけではなく、だいぶ暴力的。上巻のラストが歪んだ愛の行く末が、かなしくてみじめだと、ぐっときた。
2010/07/24
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