ニュートンの林檎 下 (集英社文庫)
ニュートンの林檎 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
みも
ロマン主義に立脚した長大な抒情詩。著者が巻末に述懐する「今はもう会うことのない異性へ送った長大なラブレターのつもりだ」『ニュートンの林檎』とは、すなわち引力。彼は、元子という強烈な光熱で圧する太陽を周回し続けた孤独な惑星であった。確かに基軸は男女の恋愛劇であるが、それで要約出来るかと言えば、さにあらず。あたかも『嵐が丘』を彷彿とさせる復讐劇であり、血塗られた親子の愛憎劇であり、官能的で耽美的である。回想形式の独白体を取り、四部構成で年代ごとにまとめ、時系列に沿っているので人間関係の錯綜にも混乱はしない。
2018/09/29
chie
壮絶な人生を歩む一人の女性と、その女性に生涯関わり、独り、自分の生を受け入れる主人公。佐伯元子、かっこ良かった。やっぱり、人間タフでないと、自分の人生でさえ、まるごと生きることなんかできないのではないかと思った。そして、肉体的、精神的にタフな人にこそ、人を引き付ける力があるのだろうな~、と思った。
2022/02/24
よしみん
人生において忘れられない人。それにより翻弄され、変わっていく道筋。人生が複雑であるように、この本の中には色々な側面がある。そこから何を学び、どう生きるかはそれぞれなんだろう。年齢を重ね、研ぎ澄まされ、そこから見えるもの。佐伯老人の哲学的なその生き様が魅力的だ。私も佐伯老人にとっての3000枚を超える大作や、僕にとっての映画や、元子にとって愛してくれた人のように、生きていた証を残せる人でありたい。
2012/08/07
晴れ女のMoeco
いろいろな読み方があるけれど、元子が地球の引力で、主人公がそれに引き寄せられる林檎なんだろう。この哲学的なところが、後のオキーフや右岸に繋がるのか。
2010/07/24
np
激動とも言うべき上巻の激しさとは対照的な,中盤までの空虚に支配された雰囲気が印象的だった.幾度かの元子との再会,そして別れを経て,凄絶な元子の人生の「脇役」であり続けた,主人公の半生を描いた物語は終了する.他人の存在にここまで心を動かされ,縛られ,揺さぶられることがあるだろうか.元子との出会いがもたらしたものは一般的な幸福の概念からは程遠いし,単純に不幸だとも言い難い.しかし,彼を捉えては離さない引力として,確かに彼女は存在していたのだろう.
2013/11/25
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