青のフェルマータ Fermata in Blue (集英社文庫)
青のフェルマータ Fermata in Blue (集英社文庫) / 感想・レビュー
三代目 びあだいまおう
その情景描写の静謐な美しさに息を飲む。ふとした一言で両親を不和にさせ言葉を失った少女里緒。治療と癒しを求めオーストラリアの島に。イルカと触れ合い、優しい仲間と触れ合い少しずつ···。海、珊瑚礁、光、月、そうした情景が里緒視点で紡がれる。美しい映像として私に届く。言葉という、人間だけに許された至高の宝、つまり人間である象徴を失いながらも我が身の罪に苦しむ里緒。言葉を語らないイルカとチェロをキーアイテムに『心の傷』と『癒し』を描き、真の優しさや立ち上がる勇気に触れる。この作品の言葉や表現がとても好きだ‼️🙇
2020/03/12
優希
とても綺麗です。心に傷を負い、言葉を失った少女・里緒は治療のために、イルカとの触れ合いを求めてオーストラリアに。イルカセラピーというように、イルカと心を通わせたり、月夜の珊瑚礁など神秘的な場面が沢山ありました。老チェリスト・JBが奏でる『フェルマータ・イン・ブルー』が全体に流れているようで、美しい旋律が美しい島によく合います。あたたかい人たちに囲まれて、少しずつ里緒の心が開かれていく様子が丁寧に描かれているのが静かに心を打ちました。最後に声を出せたのに感動。純粋さとみずみずしさを感じます。
2016/04/22
あつひめ
心の傷は目に見えなくて、なかなかいい治療法も見つからない。どんなに優しい言葉をかけてもきつく言ってもなかなか効果が出ない。親に褒めてもらった経験がない…私も同じ。親の夢を自分の夢と勘違いして歩いていた頃はダメ出しの嵐だった。リオが見る海の景色は、私が見る北の大地と同じだとつい重ねてしまった。人を愛することが怖くなる。愛されることが不安になる。でも、自分で誰かを守りたくなる時、昔の自分から抜け出すことができるのかもしれない。私のそばにイルカはいないけど、つぶらな瞳の黒猫がいてくれる。
2018/03/26
だまだまこ
再読。フェルマータ・イン・ブルー。チェロで奏でられるその曲は、フェルマータの取り方で曲調を変えるという魅力的な曲。聴いたことのないその曲が、海を背景にずっと響いていた。声を無くした里緒がオーストラリアでイルカ達と過ごし、言葉では言い尽くせない感情の海に呑まれていく。ずっと年上のJBへの憧れに近い恋心や、大嫌いと思っていた男に身体が惹かれていく衝動。海の中の極彩色の世界で、野生のイルカと一緒に泳ぐ躍動感。綺麗事ばかりではないけれど、瑞々しく鮮やかなことにゆらぎはない。束の間、旅をしてきたかのような気分。
2019/07/09
エンリケ
親からの虐待で声が出なくなったリオ。オーストラリアのとある島で彼女とイルカとの触れ合いを静かなタッチで描いて行く。人を傷付ける事に過度に敏感で自分自身を蔑ろにする彼女が痛ましく、読んでいて辛かった。イルカとの奇跡の様な交流、自閉症児の回復など救いの有るエピソードは有ったが、内省的な文章に重たさからは免れない。親からの虐待を自分のせいだと思い込む子供が多いと聞く。彼らは成長しても自分を、或いは他人を責め苛む。痛ましすぎる連鎖に暗然とするばかり。彼らに真の救いは訪れるのか?微かな予兆を残しつつ物語は終る。
2014/12/11
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