なんて遠い海 (集英社文庫)
なんて遠い海 (集英社文庫) / 感想・レビュー
masa@レビューお休み中
なんて遠い海なんだろう。荒涼とした果てのない海をただ茫然としながら眺めているような感覚に捕らわれる。見つめていたら、いつの間にか波に浚われてしまう。それは、寂しいという感覚すら通り越してしまうほどの絶望と空虚感で満たされている。嵐の真ん中にいるときは気づかない。激しい雨も、なぶるような風も、そのときは気づかないんだ。心にポッカリ穴が開いていることを思い出すのはすべてが終わった後だ。何もかもが幕を引き、もうあの頃には戻ることができないと知ったとき、はじめて失ったものの大きさに気づくのだ。なんて遠い海なのか。
2012/11/16
June
表紙の海と空がいい。裏表紙の作品紹介は不穏でざわざわとさせる、与えられる愛では満たされないことに気付いてしまった…小さなさざ波……読んでみると特別な感情でもないなという気がした。男の側から語られる「戻り雪」がすっと入り込んできた。海をモチーフにした話が続いた後に、雪の話が2つ、そしてまた海が続く。自然の情景とちっぽけに揺れ動く人間の心。大きな海や生死と隣り合わせの雪山の前では、人は秘めた思いを素直にさらけ出したくなるものなのか。ささいな会話に心が通じたと感じる瞬間、荒ぶった魂を鎮めてくれる時を思った。
2017/11/23
kaoriction@感想は気まぐれに
さざ波、荒海、凪。果てない海をさまよい、溺れ、沈む男と女。九つの短編集。海と猫の物語と、そこはかとなく救いようのない物語と。出てくる男たちが、なんて嫌な男たち、だ。魅力はないし、なぜ、みんなあんなに威圧的なのだろう。そんな男たちの言葉に心動かされる女の浅はかさも悲しい。会話もしっくりこない。ほとんどの作品を死をもって纏め上げる作者の短絡さも、なんだか解せない。題材も物語としても好みな物が多いだけに残念だな。まあ、愛は人それぞれ、様々なカタチだけど。「暗がりのローランサン美術館」は中山可穂版で読んでみたい。
2013/03/18
奏市
著者の本を読むのは初。恋愛についての9つの短篇集。あまりねちねちしたのはなく乾いた感じが多い。性に関して積極的?興味強い?女性が多く出てくる。恋人であれ夫婦であれ男女が長くうまくいくのはそう簡単では無い事が改めてわかる。仕事とのバランス含む一緒にいる時間・頻度の問題、性の問題等から互いの気持ちは度々食い違ってしまう。それらを寛容できるか否か。『海に抱かれて』が印象的だった。張合いの無い生活にこんな人生でいいのだろうかと空虚さを感じている主人公の主婦咲子の気持がわかるようなところがあり、なんかざわざわした。
2023/07/30
チェス
それぞれしんみりと、読みやすく。 図書館本。
2019/03/25
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