白夜行 (集英社文庫)
白夜行 (集英社文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
白夜行。なんと悲痛なタイトルか。明るくてもそれは日の光ではない。かといって安らかに眠るにはなんとも明るすぎる、中途半端な黄昏。決して無垢な光ではなく闇を孕んだ光の下で生きてきた桐原と雪穂の人生をまさに象徴している。すごいのは中心となる2人の心の内面を全く描かずにその人となりを浮き上がらせていることだ。表情と行動、仕種だけで2人の抱える心の闇や野望の深さを読者は知らされる。唐突に閉じられた結末ゆえに気持ちに整理の付かない自分がいる。しかしこの作品は東野氏が追求してきた人の心こそミステリの一つの到達点だろう。
2012/09/17
ヴェネツィア
著者渾身の長編。2日がかりで読了。集中し過ぎて眼精疲労に。実に面白い。従来あまり見られないタイプのミステリーかと思う。およそ100ページ前後で、それまでの事件のおおよその真相は想像がつく。そして、200ページあたりで、その推論にほぼ確信を持つ。後は二人が相利共生する理由と、事件の動機が残るだけだ。それは物語の終盤に明らかになるようでもあり、また最後まで闇の中のようでもある。とうとう語られることがないからだ。そして、この作品の優れた点はまさにそこにある。二人の心の荒野こそが語られるべき主題だったのだから。
2019/08/16
Kircheis
★★★★★ すんごい長い! そして東野圭吾さんの作品中ベスト3には入る傑作だと思う。 雪穂と亮司の二人が日の当たる場所を求め、パソコン技術と色を武器に戦い続ける。 これは白夜の中で太陽を求めた不幸な男女の19年間にわたる戦記でした。
2019/04/27
遥かなる想い
2000年このミス国内第二位。 東野圭吾という作家の凄さを身にしみて感じた一冊。ドラマ化もされたが原作には筆力がある。「西本雪穂」というヒロインを描く筆致には哀愁にも似た哀しみが感じられる。ドラマでは綾瀬はるかが演じていたが。
2010/05/05
どんちん
とうとう最後まで、二人の接点描写がなかった。二人の心理描写もなかった。それでも、まちがいなく二人は「二人はどこかで交差していることがわかる」。まさに東野魔術の術中にはまってしまった。本当に最後の最後まで展開が読めない19年の長きに亘る話であった。この二人がおこなった(と思われる)ことの是非は別とし、迷わず死を選び、目の当たりにしても関与をしない二人の心の強さには驚かされた、ラストシーンであった。
2012/09/29
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