チグリスとユーフラテス 下 (集英社文庫)
チグリスとユーフラテス 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
かのこ
ついに目覚める“惑星ナインの女神”レイディ・アカリ。 やはりこの本は私にとっての傑作本。終盤は理屈抜きに涙が出た。いつか必ず死ぬ存在である事を知る代わりに、想像力を得、未来を夢見ることができる“人類”。どんな状況でも、そこに希望を見いだせる人は、根源でとっても幸せで…だけど、母親となった人達の強さに圧倒される。 ラストの情景の夢から生まれたというこの物語。終わり方が好きだなって本はたくさんあるけれど、この本のラストはイメージと感慨が一気に押し寄せてきて、焼き付けられる。この作品の題名は絶対忘れないと思う。
2017/11/15
ざるこ
いよいよ創始者アカリを覚醒させるルナ。下巻はアカリの地球時代まで遡り惑星ナインに移民するまでのドラマが明らかに。龍一や明との出会いや宇宙局の仕事、妊娠や子育て事情など事細かで現実的。宇宙でもどこでも社会問題は変わらない。「悲惨であろうがなかろうが人生は生きるに値する」アカリの前向きな心。生きることに意味ばかりを求める必要はないと気付かされる。惑星ナインの興亡記と思ってたけど違う。種としての存続より命あるものとしての存続。チグリスとユーフラテスは希望の証。美しい惑星が目に浮かぶせつなくて優しい物語です。
2019/10/20
NAO
滅びゆく惑星。その惑星にただ一人生き残っているルナ。何のためここにいるのかを考えることは、「究極の生きる意義」を考えることでもある。何にも自分の存在意義を見出せず絶望しかない中でのこのラストは、なかなかすごいと思う。絶望なのに、なぜか明るさを感じるラスト。SFには神話的な話が多いけれど、この作品も、一つの惑星の滅亡と再生を描いた神話として読めるのではないかと思う。
2017/01/29
紅香@とにかく積読減らします💦
なぜ最後の子供と知りながら、自分を産んだのか。創始者レイディ・アカリに問う。。その問いは、人は必ず死ぬのに、なぜ産むのかに等しい。永遠の分裂よりも個を選んだ私達。『大災厄、大変化を経て生物は大進化をする』新型肺炎が蔓延している今だからこそ胸に響いた言葉。私達は特別なんかじゃない。歴史が前に進むための、ほんの添え物に過ぎない。私達が歴史をそう受け取ってきたように。後世の人々も墓標を建てるだろう。『人生に意味なんてない。でもあたしは生きていたいし、生きているし、これからも生きてゆく。これはそういう話なのよ』
2020/03/19
そふぃあ
傑作です。すごい良かった。 私は、人生には意味なんてない故に、この意味のない世界に子供を産むのは悪だと、それでも人は子供を産んでしまうから、これは原罪に等しいと、そう考えている。だから、ルナの気持ちは理解できた。感動したのは、人生なんて意味がないんだから、楽しんだもの勝ちなんだというメッセージ。また、70歳でロリータみたいな格好をして子供口調のルナは作品中でずっと軽んじられてきたが、それは周囲に「永遠に子供であること」を強要されたからで、心は十分に大人なのに、子供を演じ続けるルナに涙腺が緩んだ。
2016/05/22
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