花闇 (集英社文庫)
花闇 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヨーイチ
教えてくれた諸氏に感謝!一気読み。但し、味わったり、考えたり、思い出したりで減速の必要が有りました。歌舞伎に興味がある人、芸事の好きな人は必読と断言しよう。もう少し偉そうに言うと、御一新で(古いねどうも)一掃された芝居を偲べます。よく考えると、今やどんな偉い先生でも三代目田之助を見た筈は無いのだけれど、色んな聞き書き、言い伝え、資料などから、舞台、人物が頭の中に沸き立ってくる事が有るらしい。面白かったのは、劇聖九代目団十郎が悪役の様に扱われている事。九代目をこんなにこき下ろした文章は珍しい。続く
2015/04/21
九鳥
本を読んで、久しぶりに血が沸いた。澤村田之助に材を採った物語は幾つか読んできたけど、中でもいちばん濃く感じた。田之助の人生を傍観し続けた役者「三すじ」の冷めていながら熱を帯びた視線に同調して、江戸歌舞伎の熱狂と終焉に立ち会ったような、呆然とした読後感。こういう本を読むと、同じ時代に生きた才能をもっと目に焼き付けないと!という焦りを思い出す。
2009/12/22
お萩
口に出して読みたくなる気持ちのいい文章がたくさん。読んでいてところどころ胸が詰まる。朽ちていく様も花のようで狂う醜さも愛おしい。芳年好きとしては予期せぬところで出会えて嬉しい。一番近いところにいる人間の目線、という書き方もかなり好きな部類で一気に読んでしまった。何を読んでもハズレのない皆川作品。いつも、踏み入ることのできない世界を覗かされ、それでも決してそこには行けないのでため息ばかりが出る。皆川博子の書いた田之助の、舞台が観たいなあ...
2014/12/25
朱音
三代目田ノ助を扱った作品は他にもあるが、美貌と芸を兼ね備え一世を風靡した女形の悲劇と、ドラマチックになるしかない素材を同じ空間を生きた者の目から描いているのがいい。傲慢や我儘さえも美となる、そんな印象(そしてそこはかとなく淫靡な妖しさのある美しさ)がうまく描かれていて、江戸末期の雰囲気に酔いました。
2009/11/16
aki
歌舞伎のお話。三すじの回想シーンがメイン。周りの人間からは「変なやつだ」というように見られがちな三すじだけど、私からしたら三すじが一番人間らしく見えた。「この冷徹な目は、小説の進行に必要な作家の目ともとれるが、実は、自分の愛に見返りを求めると破綻してしまう裏方たちの悲しい本能を写す目なのである」
2014/10/21
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