さまよえる脳髄 (集英社文庫)
さまよえる脳髄 (集英社文庫) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
制服の女性に執着する男、試合中にマスコットガールを殺そうとしたプロ野球選手、捜査中に脳を負傷した刑事。これら3人の男たちと関わりを持った精神科医南川藍子だが、もうひとり彼女に付きまとう男(太字一人称で表記される)がいた。2つの猟奇殺人事件を脳科学と心理学の面から描いていくところが新鮮。とくに右脳と左脳の連携と孤立の話が面白かった。最後に明らかになる太字一人称の男の正体もうまいなあ。
2021/12/17
ヨーコ・オクダ
心の病、脳の器質的障害がある人間=ヤバい、犯罪予備軍みたいに思わせてしまうような内容。現実の世界ではそのおかげで迷惑してる人もいるんやろうけど、この作品内でサスペンス色を印象付けようとすると当然そちらへ傾くわな。精神科医・藍子に関わる病んだ男たち。途中「あれ?ヤバい人って何人登場したっけ??」と惑わせてくれるのがポイント。脳梁断裂、服装倒錯、母親に対するコンプレックス…各人の病の核の部分に迫る一方で、藍子は身の危険にさらされることに!?ラストではどんでん返しがお待ちかね。あの人まで分裂気質やったとは…。
2018/12/08
ちょん
逢坂さん初読み。精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たち。それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかるプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。脳が起こす様々な障害がとても興味深い。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始める―。人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。
2014/04/08
シキモリ
今でこそ出尽くしている感のあるサイコ・サスペンスだが、初稿が二十年以上前という今作の刊行年を鑑みると、この時代に脳科学や心理学をここまで大胆に盛り込んだ作品も恐らく前例がなかったのだろうが、理論が先行し過ぎていて何とも理屈っぽい。真相への伏線であるとはいえ、主要登場人物の男性陣三名のキャラクター像が終始あやふやで、尚且つ作中における互いの関連性も低いので、強い消化不良感が残る作品。しかし、いくら年代を考慮したとしても、作中の女性観が偏り過ぎていて、現代のフェミニストが本書を読んだら卒倒してしまうのでは…?
2020/04/13
うさうさ
脳に傷を負った三人の男たちが精神科の女医を巻き込み事件を起こすサイコサスペンス。 かなり古い作品だが、脳に関する部分だけに本質的な怖さを感じる。 治療や実験で明らかにされること、脳のこの部分が損傷するとこんな事になるのか…という怖さ。 わりと長く感じたけど面白かった。
2018/07/03
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