鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)
鳥類学者のファンタジア (集英社文庫) / 感想・レビュー
てふてふこ
ロンギヌスストーン・フィボナッチ数列・ピュタゴラスの天体ets・・・と馴染み無い言葉。ましてやメインであるジャズとも距離を置く自分ですが、今まで想像した事のない光景を思い浮かべ、壮大なSFにのめり込んだ。戦争。音楽と宇宙。酒見賢一の書く「諸葛孔明」がフォギーと行動を共にしたら凄い事になったろうな、とか思いつつ、大いに笑えて、最後のジャズセッションで感動。傑作です。
2014/01/20
ざれこ
再読。何度読んでも終盤のオプショナルツアー(完全な余談)で高揚してしまいます。架空のセッションの音ががんがん響いてくるノリにのった描写は最高。しかし分厚い本編も盛大な読みごたえで、祖母と孫である霧子とフォギーの心の通いあいにはしみじみしたし、大好物のタイムスリップSFの醍醐味も充分味わえる意欲作。何よりアラサー独身女子のフォギーの独白の面白さに引っ張られて長い話もまるで気にならず。また「ビビビビバップ」が読みたくなりました。もうKindleでしか読めないのはけしからん。音楽オタク的本だけれど面白いのになー
2017/02/04
えとろん
ロンギヌス・サーガ(今勝手に名付けた)のひとつ。例によって長くて色んなもの(ジャズ、クラッシック、タイムスリップ、ナチスのオカルト趣味など)を詰め込んで、読者を圧倒させる一作。ラストはジャズファンには感涙ものではないだろうか。少々抜けた主人公もいい味出している。
2024/10/14
長谷川透
語り手の「わたし」と語り手が寄り添う主人公「フォギー」は同一人物。三人称で語られる物語の中で時々顔の覗かせる「わたし」は現実世界からの視点で、フォギーに寄り添う視点は戦時下のドイツに時空を越えて渡った「わたし」の視点か。分離した視点が交錯しながら進む展開は、リアリズムとファンタジーが絶えず交錯するこの物語に相応しい。一風変わった手法を採用しながらも、この小説はエンタメト小説だと思う。軽妙な語りの中に、一人ボケ&ツッコミ、よくわからない喩え話などが入り、(冗長な脱線もあるが)最後まで読者を飽きさせない。
2013/12/20
kk
思わぬことで、「オルフェウスの音階」の謎を追って時空を超えた旅に出ることになった女性ジャズ・ピアニストの目眩く物語。伝奇的要素の緊張感と、主人公が醸し出すそこはかとない脱力感とのバランスがとても面白かったです。奇天烈で楽しいお話ではありますが、他方、誰かのために祈ることの大切さや、音楽にメタファーされる(たぶん)この世の成り立ちの中で人が生きることの意味合いなど、読者の深い思索を誘うような内容でもあります。全体として、このお話自体がジャズって感じでしょうか。やはり、奥泉先生は天才です。
2020/07/03
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