カスバの男 モロッコ旅日記 (集英社文庫)
カスバの男 モロッコ旅日記 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
大竹伸朗は、この本が初対面の画家。本書は、この人が1994年7月にモロッコを旅した時の絵と写真付きのエッセイ。なお、巻末にはオマケとして銅版画集(表紙はその中の1枚「サボテンと猫」)も。行程はタンジール、フェズ、マラケシュと、まずはカスバ街道の旅といったところ。トズールやマトマタといった砂漠へは踏み入っていない。絵は色鉛筆画と水彩画。いずれも、タッチや色の感じはマティスを思わせるもの。いたって単純な線でサラサラと描いているようなのだが、モロッコの風景感がそこに立ち現れるのは流石に画家。紀行文の方も⇒
2022/03/13
Akihiro Nishio
ガンビアに行くのにモロッコを拠点にして、モロッコで数日過ごそうかとモロッコ本を読む。画家の人が書いた本で、驚くべきことに、読んでも全くモロッコのことがわからない。ゴミ捨て場の様子やハエの行動、その時感じられたイメージが断片的に語られる。芸術の世界では、その瞬間感じたことを端的に表現できれば良いのだろうか、文章表現としては特に冴えているとも思われず困惑。作家ならば、歴史や文化を予習しておいて、自分の旅行経験とうまく重ねて書くだろうに。作家が書く文章の面白いところは、その余剰の部分にあるのだなと気づいた。
2017/11/09
ホークス
独特の語り口が魅力のモロッコ旅行記。詩的&難解な所も良いスパイスとして味わった。現地では当り前にガソリン缶を加工してドアを補強するが、先進国のアート寄りの「知的な」人々は、これを見て「既製品へのアンチ価値観の到来」を告げたりする。著者はこのありがちな、リアルを踏まえない「こざかしい」言動を嫌悪する。思うに著者は、己れのちっぽけなコミュニティの常識を社会の法律の様に吹聴する「知的な」人々の無自覚さ、自立とは程遠い姿に我慢ならないのだ。自分の捉えたリアリティ=「感じ」に嘘をつくなど、著者にはあり得ない事だから
2016/08/29
kana
現代美術家、大竹伸朗さんの目から見たモロッコはガイドブックとはまるで趣が違う。言葉の選択も景色の切り取り方もスケッチされた絵もかなり個性的。ガイドブック的要素はまるでないのに読み終えたあとこんなにもモロッコに行きたくなるのはなぜだろう。大竹さんの目に映ったモロッコが自分の目にはどのように映るのか、自分のモロッコがどんなものなのか知りたくて仕方がなくて旅に出たくなる。そんな、なんとも不思議で味わい深い一冊でした。
2017/01/24
すくすく
何度目かわからない再読。旅に出たくなったり、外出が少ない時にこの本を開く。スペインのマラガからモロッコのタンジール、フェズ、マラケシュへの旅を通じ鮮烈な色彩と景色、人、モノ、熱気の渦と共に混沌に引きずり込まれる。住んでいる人にとってはそれが日常であり、その断片、断片への感動、驚きをあるがままに鮮やかに文章とスケッチと水彩画で表現している絵日記。読むたびに旅に出た気になる大切な本
2022/11/19
感想・レビューをもっと見る