少年トレチア (集英社文庫)
少年トレチア (集英社文庫) / 感想・レビュー
mocha
人工都市・緋沼市で多発する猟奇犯罪。犯人は少年トレチア?都市伝説のように囁かれるその正体は…。たくさんの登場人物が外周で蠢いて、なかなか核心に近づけない。蛇足とも思える個々のエピソードに焦れったくなるが、読み終えて俯瞰してみればまるで箱庭都市のそこここにズームするカメラのようだ。子猫を嬲り殺す描写はいたたまれず読み飛ばす。エログロ穢いものを曝け出し、やがて訪れるカタストロフ。残酷でいながら幻想的な美しさも漂う。すごいパワーを感じる作品だ。萩尾望都さんののんきな解説で少し救われた。
2018/08/04
UK
読メレビューで皆さん語られているように、残忍な描写でもどこか静謐で透明感がある。ふむ。とは言え。やっぱりテーマが好みでないな。コドモの悪が語られている話はスキじゃないのだ。筆致には興味があるけど、あえて他の作品にチャレンジするかな。どうかな。
2017/02/02
skellig@topsy-turvy
湿気と凶暴さ、硬質さが共存している津原ワールド。終盤の畳み掛けが凄くて一気読み。緋沼サテライト、という箱庭的世界で跳梁する「不気味さ」そのものが主人公のような印象を受けました。ただ地の文が続くだけでない構成も面白い。
2013/07/02
きんぎょっち
著者の本は初読。分類はホラー?幻想小説というには摩訶不思議さが足りない。むしろSF?無邪気に残酷な子供たちが産んだ都市伝説トレチア。泥沼であった緋沼に作られた高層の人工都市と人工池。そこに水への恐怖のメタファである摩伽羅がとりつき、人の命を糧に座敷わらしのように実体化。夢と現実が錯綜する…。着眼点はいいが不要なエピソードが多くまとまりに欠ける。閨など唐突に古い言葉や言い回しが出てくるのもイマイチ。萩尾望都の表紙と解説がなかったら、さらにイマイチだったと思う。真梨幸子と同じ路線でややSFより?悪くないです。
2017/01/28
はちくま
伝説の名作(怪作?)という評判だったので、なかなか手が出せず、結局今頃読むことに。津原さんが凄いのは、ぐっちゃぐっちゃで血みどろで厭~な展開でも、品があるというか、典雅な香りを失わないところだと思う。読んでいる間中、微熱に浮かされたような心持だった。予想とは方向性が違っていたけれど、やはり伝説の名作。ただ、昨今の状況を考えると、幻想小説だとは言っていられない、その現実が一番怖い。
2012/06/24
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