斬られ権佐 (集英社文庫)
斬られ権佐 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
これもまた、宇江佐さんでなけりゃ書けなかったであろう、連作短編集。理想の夫婦、理想の親子関係が余すところなく描かれている。個人的には、赤縄の話が好き。「これに繋がれたものは、敵討ちの相手でも離れられない」という。権佐にはお蘭の花嫁衣裳を縫ってもらいたかったけれど…読後感よろしい作品でした。
2016/09/26
佐々陽太朗(K.Tsubota)
宇江佐さんの小説を読むのはこれで23冊目。追悼の気持ちで未だ読んでいないものを探して読んでいます。「おっこちきれた」という言葉を初めて聞いた。「ぞっこん惚れる」ことであるらしい。人と生まれ、ただ一度の人生、それも命がいつまであるかは誰にも判らない。であればこの人でなければとおっこちきれることは一等の幸せに違いない。権佐とあさみ、そして娘のお蘭の物語に恥ずかしげもなくボロボロ泣いてしまいました。解説の藤水名子さんのお薦めに従い次は『掘留の家』を収録した『富子すきすき』(講談社文庫)を読むことにする。
2015/12/09
のり
後に嫁となる「あさみ・女医」を助ける為に、88ヶ所の刀傷を負うが、あさみの懸命な治療で一命をとりとめた「権佐」。家業の仕立て屋で働きながら、八丁堀の「数馬」の手先を勤める、もう一つの仕事もあった。多数の傷を抱え、人々に「斬られ権佐」と呼ばれ、後遺症にも悩まされるが、妥協のない、人の心を汲む仕事振りには心温まる。あさみとの間に一人娘の「お蘭」がいるが、大人びた、物怖じしない性格が微笑ましい。権佐の一生は大事な人を守る為の一生でもあった。桜の季節に想いを寄せる親子の心境も沁みる。
2018/02/07
Shinji Hyodo
やはり宇江佐さんの時代物は泣かせるなあ。愛しい女性を守るため全身八十八箇所に刀傷を受け辛うじて生き延びた「権左」。その顔貌も変わる傷に、時に化物呼ばわりされながらもお上の御用を助ける仕立屋だ。権左の傷を必死に治した蘭方医のあさみは権左の女房となり、一人娘のお蘭も屈託無く成長し…多少の事件に巻き込まれながらも、このまま幸せな三人家族で過ごせればいい…のに。お蘭を守るために八十九箇所目の傷を受けた権左は命を落とす。仕立屋として最後の仕事であるあさみの着物のしつけをやり終えて…グスッ(;_;)
2017/01/31
じいじ
これは凄い!読み終わって暫く頭の中がボオーとしている。間違いなく感動させてくれます、泣かせてくれます。時々、ほんのり笑わせてくれます。舞台は江戸下町・八丁堀。(後の)妻の身を守って全身88か所に刀傷を受けた仕立屋・小者の二足の草鞋の権佐。その瀕死の権佐を救った外科医あさみの夫婦愛を描いた物語。身分、境遇が違う二人の恋、結婚後の生活が切なく、微笑ましく、温かい。権佐の悲しい結末は予想したが、残された妻娘のその後の幸せを描いた最終章は素晴らしい余韻を残します。宇江佐さんの愛読書が、もう一冊増えました。
2015/10/17
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