ゲーテさんこんばんは (集英社文庫)
ゲーテさんこんばんは (集英社文庫) / 感想・レビュー
ころこ
今から200年前、18世紀に生きた人だが、ガジェットが異なるだけで、意外と今と感覚が変わらない。最新の通信手段・手紙を用いた『若きウェルテルの悩み』を書き、不幸な愛を発見した。自分の前半生を『詩と真実』に残したのは初老近く、『ファウスト』を長年温めて発表したのは晩年だ。結婚を先送り先送りにして、進退窮まって結婚したのはこれも初老近く。自分が後年どうみられるか過剰すぎるくらい自意識があり、我々の一生とそう変わらない現代的な意識を持っていることが描かれている。
2024/10/23
mt
ゲーテの幼年期は教育熱心な父親に鍛え上げられ、25歳で「若きウェルテルの悩み」を書き、凄まじいセンセーショナルを巻き起こした。有名な「もっと光を」という臨終の言葉の解釈も面白いし、知人の孫に残した絶筆も文豪とは思えぬ内容で微笑ましい。ゲーテが生きた時代に手紙という通信手段が確立したことも、筆まめなゲーテの貴重な資料を残すことに寄与した。本書も、その手紙から多くを引用し、親しみやすい読み物に仕上げている。今後、ゲーテの作品を読むとき、中でもファウストを読むとき、理解の一助になることは間違いない。
2015/11/07
Pー
池内さんの作品、先日『二列目の人生 隠れた異才たち』を読んで是非他の作品も読んでみたいと思い、今回目についたのがこの作品。ゲーテと言えば「文豪ゲーテ」しかイメージしなかったのだが、何が何が地質学や鉱山学、植物の発生や骨の研究。そして地誌、民俗、歴史から美術や建築etcと多才で絵画の作品も多く残されているそうで驚いた。本業?のワイマール公国の行政官としての業績も多く残されているそうだ。そして「英雄色を好む」も実践したような(笑)。この作品も内容があまりにも多彩でよくわからない本だった。
2017/12/22
星落秋風五丈原
あの大文豪はこんなにも面白い人だった!十代から恋愛遍歴を重ね、齢70を過ぎて17歳の少女にプロポーズした。二十代でベストセラー恋愛小説を書き、ワイマールの顧問官として職務に取り組んだ後、突然偽名を使ってイタリアへ逃亡した。詩をつくり、石を集め、山を登り、82歳で大作『ファウスト』を完成した。数多くのエピソードとともに、天才ゲーテの魅惑の世界を散策する画期的評伝。第五回桑原武夫学芸賞受賞。
2005/12/18
マッピー
今まで文豪ゲーテの顔しか知りませんでしたが、ゲーテは優秀な行政官であることを知りました。意外だったのはそれほど小説を多く書いてはいなかったこと。そして、彼の多才ぶりは相当なものだけど、それは天性のものではなくて、教育パパの指導のたまものだったこと。鉱物が好きで、地理や地形に造詣が深く、解剖学や植物学に興味津々で、旅行好き。でも一番好きなのは恋愛(?)世の中のあれこれに興味を持って、子どものように好奇心旺盛だからこそ、多くの箴言をものし、詩作をし、長く読み継がれるような小説を書くことができたんだろうなあ。
2019/11/13
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