夢の女 (集英社文庫 な 25-1)
夢の女 (集英社文庫 な 25-1) / 感想・レビュー
水零
これまでの人生が、夢であればよかったのに。家族のためと今日もまた、見知らぬ誰かに身を差し出す。かきあつめた夜にまじる、わずかな光を数えては、家族団欒の夢をみる。掴んだはずの幸せは、夜に浮かぶ睦言のようにたよりなく、消えぬよう、手放さぬように、必死に明日へつなぎとめる。きつく結んだは幸せは、私の日々の裏側で、絡まり、綻び、ぷつん。こちらを向いていたはずの幸せが、いつの間にやら気まぐれに、そっぽ向く。もう一度、こちらを向いてと願えども、過ぎ去った幸せは、もう。覚めてしまえ、そうであってくれ。私の人生、私の夢。
2020/07/24
マリリン
永井荷風が描く世界は暗さもあるが、美しい。この作品は25才のもの。子供の頃殆ど興味がなかった日本文学の良さが伝わってきた。傾倒したと言われるゾラの作品も読んでみたい。
2016/08/02
tenchi
荷風は「濹東綺譚」以来2冊目ですが、若い頃の作品ということで情景描写の端々に、より感情移入が感じられような気がしました。下町情緒あふれるその描写は哀しい程美しく効果的に物語を盛り上げています。物語は、没落氏族の美しい薄幸の少女が困窮する家族を支えるため賎業へと身を崩していく、古典的とも言える悲劇を描いていますが、複雑で難解な物語が多い昨今ではむしろ新鮮にさえ思えます。「濹東綺譚」では木村荘八の挿絵が極めて効果的でしたが、もしこの話にも荘八の挿絵がちりばめられていれば、魅力はさらに増していたかもしれません。
2016/09/18
shami
ただ哀しいだけでなく、ゆったりとした余韻がある作品。
2011/10/31
吉田
女性は実に男性とは全く異った組織の身骵を持ているのだ。←わかる
2023/04/06
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