パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫)
パタゴニア あるいは風とタンポポの物語り (集英社文庫) / 感想・レビュー
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
風と氷河に閉ざされたパタゴニア。世界で最も荒れるドレーク海峡を南米最南端の孤島へチリ海軍と供に進むシーナさん。やっぱり彼の作品は旅モノが面白い。今回は怪しい探検ではなく「正しい探検」。とはいえ、チリ海軍のおっさん達と船で酒を酌み交わすのはいつものこと。眼前にそびえる大氷河、高く天に向かってそそり立つパイネ山。写真は添えられているけれど一度この目で見てみたい。丘に咲く一面のタンポポを見て妻を想い、地元の雑貨屋で買った素材で息子へのお手製のチャンピオンベルトを作る。そんな椎名さんの優しさも感じられる。★★★★
2017/04/16
T2y@
あとがきにある、『旅の本ではなく夫婦の物語である』 置いて来てはいけない状態ながら、残して来た妻。 地球の果てパタゴニアの自然の厳しさと、心の葛藤の嵐が、綯交ぜの様な切なさが全編に漂う。 「行ってきます」と気持ちよく出発できる旅ばかりではない。その切なさを思い起こさせる稀有な紀行録
2019/02/13
カムイ
読んでいる間、ゴーと唸り風を体感した。
2021/06/27
syota
テレビの特番撮影のため椎名さんがクルーとともにチリ側のパタゴニアを旅したときの記録。番組は1985年の国際ドキュメントコンクールでグランプリを獲得したが、文章の方もなかなか読み応えがある。チリ海軍の軍艦に同乗して沿岸を回る前半は、あまりに過酷な自然に度肝を抜かれたが、内陸部をジープで旅する後半は、秘境の旅という言葉がぴったりで旅情をそそられる。しかしそれ以上に、夫の仕事が原因で精神的に不安定になってしまった奥さんを日本へ残してきた椎名さんの心の葛藤、不安、奥さんへの気遣いが文面から滲み出ていて、心を打つ。
2020/07/21
Sakie
若い。ロマンチスト全開だ。三角の石を拾い、穴をあけてペンダントにしようと暇があれば削り続けるくだり。それは奥さんへのお土産であり、削る時間が奥さんのことを想う時間であったことが最後に明かされるのだ。思い返すと、エッセイにしろ小説にしろ、美しい景色を丁寧に描写しようという努力が見えたことがあっただろうか。連れになだめられるほど、繊細さが表に出ていて、シーナさん道への飛び石を見つけた気分だ。男同士で旅に出てどんちゃん飲み食いする楽しみも既にここにあって、これはたまらんのだなあ。パタゴニアの語源はでっかい足。
2020/04/23
感想・レビューをもっと見る