六道遊行 (集英社文庫)
六道遊行 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ハチアカデミー
悔しいかな、「江戸読本とシュールレアリスム小説の、みごとな交配」(篠田一士)以上の賛辞が思い浮かばない。藤原中麻呂、道鏡の時代の盗賊が、時代を超えて現代へタイムスリップしてストリッパーを身ごもらせる。その後はそれぞれの時代を行き来し、それぞれの悪に立ち向かう。主人公小楯は、アウトロー故、時代を変えること、動かすことはできない。内に秘めたる恋も、ただただ思い煩うだけである。それでもアウトローとして生きるところが彼の魅力。時代を冷静に眺め、それに左右されず己の信念を貫く。遊行とはすなわち眺め歩くことである。
2013/09/05
sedentary
石川淳の書く女性って、本当に刹那的。拓けてゆくようなおさまってゆくような繰り返しのなかに、コミカルな面白さがあった。 (冒頭)「月はまだ出ないのに、道は鏡のように澄んでいた。立木の影がそこに落ちて、行くひとはしばらくとぎれた。ここは奈良の春日の三笠山のほとりである。西南にむかってどこまでもすすめば、道は咲く花のにぎわいを抜け出て、平原を越えて、遠く山林のかなたに消える。」
2014/11/01
gkmond
文を読んでるのが楽しいので、それ以外はおまけと割り切ったけれども主人公が現代と道鏡の時代を往復する意味もわからなきゃ「まことの恋」がどこに書かれているかもわからなかった。SFとか言うのはSFに失礼だろうに。自発的に書いて売り込んだのにラストが打ち切り漫画みたいになってるのも面白かった。ひどいできだと思うのだけど読んでるときは楽しく読後感も悪くなかった。不思議な小説。
2024/03/31
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