旋風 (集英社文庫)
旋風 (集英社文庫) / 感想・レビュー
色々甚平
柔術家が自分を殺そうとした人物を探る珍しい設定の部分がまず惹かれる。そして、内容はミステリーよりもハードボイルド小説の風体で、ところどころで昔の日本ドラマ的な激情的な女性が現れる部分もあり、良い香ばしさを感じられる。最後はやりすぎというか、伏線回収用に作られた展開すぎてポカンとしてしまうが、主人公が上京した約一週間でここまで人生が変わってしまうのかという程に過去が劇的に巻き込んできて破裂する勢いが旋風そのものに感じられる。大人たちのどの口が言ってるんだという厚顔さや、子供たちのやりようの無さが虚しい。
2022/11/25
お笑いループシュート
『滅び行く八星流柔術が、仕事量が少なくなって終わりが見えている紋章上絵師の世界やショーアップが重視されたマジックの世界のメタファーである』と解釈するならば、作品の読み方も多少変わってくる。 泡坂長編の中でも決して評価が高いと言えないし、泡坂妻夫が得意なジャンルといえない格闘技・柔術の世界を選んだのも、90年代に泡坂妻夫が重い腰をあげてこの作品を書いたのも、そんな心境を意識してか無意識にだったのかは分からないが、どうしても書き残しておきたかったのだろう。
2021/09/23
鳥居
若い八星流柔術家・哲がいきなり崖から突き落とされているところから始まります。この犯人を、彼が上京してからの日々を交えながら探すわけですが、その過程が独特で、時代や世界を感じました。ただミステリ仕立てのプロットとはやや相性がよくなかった感も残ります。
2017/12/31
Tetchy
柔道をテーマにミステリが書けるかを主題にしたかどうかは判らないが、恐らくは織口哲という一人の武士を主役に所謂立身伝みたいなものを書いてみたかったのではないだろうか?しかしプロットは上滑りしているような感じで、特に登場人物の相関が何ともまあ、少女漫画的である。織口哲のストイックさ、実直さは今の我々にないものであり、ある意味ハードボイルドかもしれない。
2009/04/24
よしだ まさし
泡坂妻夫『旋風』集英社文庫を読了。 昭和30年前後の貸本小説を読んでいるような気にさせる作品。地方から東京に出てきた武術家でもあるお人好しの快男児が事件に巻き込まれ、女性の助けを借りながら事件の真相に挑むというもの。いかにも泡坂さんらしい錯綜した謎が楽しめるのだけれど、一方で人間描写のぎこちなさもある意味泡坂作品らしいという感じもする。
2015/11/06
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