神鳥イビス (集英社文庫)
神鳥イビス (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
忘れられた明治の官展派洋画家、河野珠枝の「朱鷺飛来図」に秘められた謎(それは同時にトキ絶滅のナゾでもあったが)を追って佐渡へ、はたまた奥多摩へと物語の舞台を移動させてゆく手法は松本清張の『砂の器』を髣髴とさせる。ただし、こちらは珠枝の絵がそうであったように、いつの間にかリアリズムを踏み越えて幻想空間に迷い込んでゆく。行き止まり感を持ったイラストレーターの葉子と、冴えないバイオレンス作家、慶一郎のコンビネーションはその噛み合わないところがまさに絶妙。エンディングも心憎い演出で、奥行きのあるホラー小説。
2017/03/26
オフィーリア
壮絶な死を遂げた女流画家が死の直前に遺した作品「朱鷺飛来図」と、その画家の生涯を追うイラストレーターの主人公と売れない画家のバディ。しかし何時しか異界に踏み込んでいき、壮絶な体験が彼女たちを襲う…。 画家の狂気が次第に顕になる静かな恐怖から、怪異がゴリゴリに物理攻撃で襲い来るパニックホラーへと異なる種類の恐怖を臨場感たっぷりに書き分けるのは作者様の流石の筆致。絶滅危惧種として保護の対象という認識しかなかった朱鷺がここまで恐怖の象徴として描かれるとは…。種の怨念は時をも超える。
2023/11/19
エドワード
イラストレーターの平田葉子は、人気バイオレンス作家の美鈴慶一郎の作品の装幀を手掛けるため、明治の女流画家、河野珠枝の「朱鷺飛来図」を見る。平凡な写実画が、ふとした瞬間に地獄絵と化す謎。珠枝をモデルに映画を撮影した女性監督の死の謎。絶滅に瀕する朱鷺の謎。奥多摩の寒村へ向かった二人が見たのは、温和な鳥類を一種族まるごと亡ぼした人間と鳥との死闘の幻覚=それこそ珠枝の見た地獄絵だった。真夏が真冬と化す次元の裂け目、怪鳥の幻との息詰まる戦い、SF色豊かなミステリーに、凸凹コンビの珍道中が笑いを添える。
2016/08/30
カナン
白雪を艶やかな血に染めて27歳で夭逝した謎の画家、河野珠枝。数々の浮名を流した彼女が描いた多くの花鳥画の中に其れはあった。「朱鷺飛来図」。夕映えの空を背景に乱れ咲く夥しい牡丹と、その花弁を狙い引き裂こうと舞い降りる薔薇色の風切羽を広げた朱鷺の群れ。精緻なだけで凡庸だと酷評された彼女が最期に描いたのは、それまでの画風とは一線を画す、得体の知れない恐ろしさと寒気を覚えるほどの幻惑的な美を湛えていた。イラストレーターと作家である男女がそれぞれの仕事を切欠に足を踏み込れてしまった世界は、悪夢であり、悲哀の夢幻。→
2016/06/01
tama
図書館本 篠田シリーズ。うーーん。面白くないかっちゅうと、面白い方に入るんだけど、どことなく作りのずさんさが滲むようで。なのに最後まで読ませたのは作者の力量でもあると思う。
2014/12/23
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