恋路吟行 (集英社文庫)
恋路吟行 (集英社文庫) / 感想・レビュー
Yu。
儚く哀しく美しく、異性に対する秘めた想いとは裏腹な出来事との織り成し加減に魅了され、意外なラストに駄目を押される10の人生ミステリ。お気に入りは、彼と彼女とでは意味合いが対極的というタイトルの皮肉さがもうたまらない「火遊び」。これぞ淡い恋心、世代間を超えた運命的な人間ドラマに沁み入ってしまう「勿忘草」。決して交わることのなかった二人の女性の人生が主人公を通して重なる時の哀しき真相と言ったらもう…「子持菱」。
2015/07/16
kanamori
☆☆☆
2010/09/24
浅木原
恋愛ミステリー中心の10編。『ゆきなだれ』『折鶴』の系列だけど、そこからさらにケレン味を抜いて『蔭桔梗』系列の細やかな機微で攻める方向に行ってるので、どうしても地味という印象は残る。異彩を放つ脱力系オチの「怪しい乗客簿」が一番印象的かもしれない。「藤棚」なんかは典型的な泡坂ホワイだし、「子持菱」も意外な真相が明らかになる職人人情ミステリだけど、個人的にはそれよりノンミステリの怪異幻想譚に近い「黒の通信」や「るいの恋人」の方が好きかも。ミステリ的には「火遊び」のタイトルのダブルミーニングが好きかな。
2015/01/29
Tetchy
コンセプトがないオムニバス作品集。理屈では解明できない奇怪な出来事を軸に展開する普通小説もあれば、些末な事が実に意外な真相を孕んでいるミステリめいた小説もあり、話の流れに身を委ねるような純文学作品もある。ミステリとしては「藤棚」が一番それらしいのだが、やはり人間関係が瞬時に裏返り、深い余韻を残して掉尾を飾る「子持菱」がベストか。奇妙な印象が残るのは「るいの恋人」。結末が少々あざといのが瑕。
2009/05/07
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