負籠の細道 (集英社文庫)
負籠の細道 (集英社文庫) / 感想・レビュー
churu
孤独や寂寥に容赦なく吹き込んでくる風景にふと心が奪われる時がある。観光ガイドの類や、海外パックパッカーの武勇伝のようなものばかりが巷にあふれているが、地を這うように裡なる孤独と向き合いながら、日本の原風景たる風土や人々の暮らしを切り取った本が読みたかった。この本を手にした時、そんな自分の求めていた紀行文に出会った確かな手応えがあった。もう半世紀以上も昔の作品だが、ここに登場するの風土はどれも地べたを踏みしめるように旅した作者の足跡。現代社会の過多な文明に食傷した孤独な旅人の心に滋味溢れる風を運んでくれる。
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