朱夏(下) (集英社文庫)
朱夏(下) (集英社文庫) / 感想・レビュー
クロネコバス
宮尾登美子さんの自伝的小説、下巻。満州引き揚げと一言で言うが、これ程過酷だとは思ってもいませんでした。敗戦が伝えられ、日本人と満州人の立場が逆転。日本人を憎む満州人に殺されるかもしれない恐怖、飢え、寒さ、病気、飢え、農村の古い価値観。次から次へと乗り越えなくてはいけない苦難が。終戦1年以上経ってやっと日本の地を踏めたのです。長い共同生活で綾子の嫌な面も著す宮尾さん。しかし、20歳前後の世の中を知らない娘です。本当に胸が苦しくなりました。
2019/02/14
あきまこ
下巻に入って、ますます引き込まれてしまいました。何と激動の密度の高い一年半だったのでしょう。単行本の方で読了しましたが、あとがきに宮尾登美子自身が語っておられるように、一生分の不幸というか、地獄というのか、が詰め込まれているのではないのでしょうか。着のみ着のまま、子のおむつぐらいしかない身の回り品が全財産の、襤褸をまとった乞食同然の難民生活。後から語られる日付や後日談が、とてもリアルでした。文字を追い、想像し、考える、そういう読書時間でした。
2016/02/28
mitubatigril
再読 身一つで逃げ出して来た綾子達家族 夫の学校関係者の伝手で開拓団に入れてもらい先の見えない避難生活が始まる。生活の為にはと捨てられたゴミから盗みを働いたり、躊躇なく極限の生活を送って行く。先の見えない避難生活の中、帰れる事を夢見て幾多の困難を乗り越えながらひたすら耐えて耐えぬく。そして夢にまで見た時がやってくる。 無事帰国出来た綾子達。故郷に帰る中の汽車の中の綾子の台詞で今日は何日?と夫に尋ねその答えを聞いた綾子の感想がたった1年半の時間だったのかとある。その言葉に凄く重味を感じる。
2020/04/18
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
満州から終戦後に引き揚げる、宮尾登美子氏の自伝的小説。干してあるオムツを盗んで饅頭と交換したり、背中の娘を売ってうどんを食べたいと願ったり、中国人達から乞食のように扱われながら何とか帰国。これ読んだ後には、食べ物着る物すべて無駄にできん、という気持ちになる。
2015/02/19
ニノユキ
日本へ。やっと日本へ帰りつくことができた綾子親子。満州での暮らしは宮尾登美子さんの実体験からきてるのか…。戦争を知らぬ世代の私にも深く心に刻まれる一冊。
2015/03/15
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