童貞物語 (集英社文庫 さ 15-5)
童貞物語 (集英社文庫 さ 15-5) / 感想・レビュー
背番号10@せばてん。
1991年2月25日読了。あらすじは忘却の彼方。(2023年10月26日入力)
1991/02/25
こすも
リアリズムを追求したような作風で、佐藤正午さんの作品群ではかなり異色。村上春樹作品の中の『ノルウェイの森』と同じような立ち位置に感じます。30代の主人公が高校3年の1年間を振り返り、なにげない日常と初々しい高校生の心情を語ります。タイトルからは連想しづらいピュアな物語で、このタイトルの付け方はストレートな青春小説に対する作者の照れも入っているのかと思うぐらい。また、いつもの煙に巻くようなユーモアは排され、抑制の効かせた文体で全編が綴られており、これがかえってノスタルジーを掻き立るように思いました。
2018/03/18
頭痛い子
タイトルがタイトルだけにハーレクィン的な事を想像し、かつ表紙から思い描く内容は『部活漬けだった野球少年が、ひょんなことから或日童貞失う物語』を想像しないだろうか?結果、ネタバレになるが全て否。1mmもエロがない健全な等身大の、青春小説だと思う。そして結構読んできた佐藤正午作品のなかで一番好きかもしれない。はっきり言ってこれが『等身大』高校生の文体では?今の時代、煙草飲酒はさておき、乗代雄介の『それは誠』なんかより遥かに等身大なのは間違いないかと。作品良すぎて状態良い本を古本屋で買い直しました。
2024/04/11
ちょーのすけ
単行本で2度(出版時の87年とみすず書房の『愛についてのデッサン』を読んだ後の10年)読んでいて、『鳩の撃退法』以前では一番好きな佐藤正午作品だと思っていた。3度目の感想もほぼ同じ。あまりこの著者らしくない瑞々しい作品と言っていいかな。それ故なんでしょうか?佐藤正午さんにとってあまり思い入れのない作品なのか、絶版状態なんですよね。人に薦めたいときにタイトルがちょっとあれなので、『バニシングポイント』が『事の次第』と改題されて再販されたように、これもそうしてもらいたいと思う。
2021/09/17
まこみや
未読だった。タイトルから何となくかったるい小説なんじゃないか、と早合点して発行当時は手に取らなかった。失敗。まったくの勘違いだった。江川卓と同世代の、決して江川のようにはなれない、進学校の野球部の高校三年生が、進路と恋と友情の中で揺れながら、生きることはある意味断念することだと知る物語だった。いささか戯画化されているけれど、担任の正太郎先生がいいですね。集英社文庫の島村洋子さんの解説もいい。島村さん、最近、どうされてるんでしょうか?
2019/06/22
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