不知火軍記 (集英社文庫)
不知火軍記 (集英社文庫) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
「ある史実があって、その根を変えずに葉を変える。根を変えないからこそ稗史―伝奇小説となる」関口苑生氏が巻末解説で、史実が背景にある時代小説での虚実について、『八犬伝』の作中人物滝沢馬琴の言葉を引用した一文です。本書は島原の乱と同じころ、天草で繰り広げられたもうひとつの戦いを描いた表題作ほか短編全3話を収録。そのどれもが見事な葉を茂らせています。山風先生、汲めども尽きぬ面白さです。
2018/08/29
ひこまる
『不知火軍記』→天草のキリシタン反乱に碧い眼をもつ小西行長の孫娘が参戦。御家再興を目指す天草衆と死闘を繰り広げる。・・・山風独特の滅びの大団円がかえって心地よい。『盲僧秘帖』→毛利氏と陶氏の戦に盲僧、伴天連が関わり・・・毛利元就と山風の組み合わせが新鮮。両者の間で小賢しく立ち回っていた蝶丸(盲僧というか盲の元僧だよな?)だが元就の方が一枚も二枚も上手だった。盲僧エピも日本人伴天連エピも史実にのっとっているというところが相変わらずの構成力の妙で恐れ入るが、蟇丸がロレンソ法師だなんてキャラ変わり過ぎだろ!ww
2012/11/26
東山ききん☆
みんな大好き山田風太郎御大の短編集。今回は忍法とかではなく、戦国〜江戸初期の戦を描いたものばかり。いずれも大河感のある一連の描写を短い尺に詰め込んでいるので、いつもの忍法帖シリーズのノリで読むとすごいスピード展開に目眩がする。いや、目眩の原因はもっと他にあるような気もするが……登場人物達がいずれもものすごくキャラ立ちしており、魅力に溢れすぎていた。特に不知火軍記の不知火。やりたいことは合理的だし理解できるんだけど、あまりに破茶滅茶で滅茶苦茶で最高にイカれたヒロインだった。
2019/09/15
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