おとしばなし集 (集英社文庫)
おとしばなし集 (集英社文庫) / 感想・レビュー
印度 洋一郎
芥川賞作家によるパロディ短編集。中国や日本の伝説・歴史上の人物達がべらんめぇ調で話す「おとしばなし」や、有名な海外文学からの二次創作な物語など、短編というよりも掌編が多いので読みやすい。源義経の家臣が妖力で戦国時代まで生き残り、とんち名人の曾呂利新左衛門と出会う「曾呂利咄」が収録作では最古(昭和13年)だが、ダークファンタジー調で面白い。この他、成長したセドリックが失意の日々を送る「小公子」、乞食小僧トムに王位を簒奪されたエドワード王子が復讐を誓う「乞食王子」など、シニカルな作風で読ませる。
2020/07/20
コギソマサヒロ
この芥川賞作家については何の知識もなかった。ただ、ご他聞にもれず 「アルプスの少女」をネット検索していたら、偶然この本の小品にゆき 当った。ただ、ヒロインはハイジではなくクララである。ハイジは小さ な白い花にとなり、アルムじいさんは木の椅子の雪の雫となった!ペー テル(ペーター)は兵隊にとられ、やがて街でクララと再会する。ペー ターとクララがくっつく新展開。けっこうおもしろい噺だけど、これは 今から約半世紀以上前の戯作だった。しかし、なぜか胸を打つ。戦争で廃墟 となった街に虹をかけるというのは。
2016/10/28
坂田 哲朗
森鴎外や芥川龍之介、太宰治もオリジナルを超えるほどの二次創作物を文学として書いているけれど、これほどのパロディーにするにはオリジナルの本質を射抜いていないとできないのだろうと思った。石川淳をてっとり早く読んでみようと思ったけれど、火傷してしまいました。
2016/07/03
パトリック
堯舜から清盛まで人物を題材にした落語のような落ちのある話。小公子からハイジまで物語を題材にした変え話。いずれも皮肉な視点からの著作であり、やはりこの作者を読むなら「狂風期」「至福千年」あたりを読みたい。
2019/03/29
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