岩伍覚え書 (集英社文庫 み 9-1)
岩伍覚え書 (集英社文庫 み 9-1) / 感想・レビュー
Smileえっちゃん
宮尾さん3作品目の作品で宮尾さんの父がモデル。昭和10年代を舞台にした風俗が描かれている。芸奴、娼奴を斡旋する紹介業を営む富田岩伍。詐欺師や興行師を相手に命を張って生きる女の世界を、岩伍の語りを通じて綴られている。その時代を丁寧に語られているが、慣れない文体で読みづらく感じられた。
2022/11/27
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
宮尾登美子氏の父親、岩伍氏の日記から書き起こした風の小説。芸妓紹介人の父親岩伍は宮尾氏の作品お馴染みの人物である。仕事の中で起きたいたましい事件、恐ろしかった事件、騙された事件など、気っ風の良い美しい文章で書かれている。没落して、岩伍に身を売りにくる弁護士の3人娘。借金のため妻を売りに来る教師。気の毒がり親身に世話をする岩伍。その後に図らずも巻き込まれる揉め事。いやあ宮尾登美子氏は本当に面白い。
2016/08/22
あきまこ
『櫂』『朱夏』などを読んで感銘を受けました。喜和の夫であり綾子の父である岩伍の視点である本書を読みたくて、何ヵ月か読みたい本リストに記録しておいたところ、2016年2月25日、文字が大きくて読みやすい改訂新版が出てたのですね、とても嬉しいです。岩伍が仕事をしてきたこれ迄を振り返って、忘れられない事件を口述してるのを聞いているような読書時間でした。現代では使われない言葉や例え豊富で魅力的で、蛍光マーカーで線をつけたいほどでした。大正の時代はわかりませんが、昭和になってくると「少し前」という気持ちがあるので、
2016/12/11
けいこ
著者の父親の日記を元にした女衒のお仕事。侠客などが出てきて命のやりとりをしたりして、凄い世界でした。昭和初期にはこんな話はゴロゴロあったのでしょうか。「満州往来」で慰安婦の事について触れていました。職業に貴賤なしというけれど、それは本当の事なのでしょうか。慰安婦の扱い方にゾッとしました。人権が守られて、始めて′職業に貴賤なし′といえるように思えました。
2018/05/17
Hiroki Abe
岩伍、当人の語り口調で進む遊廓を舞台とした物語は瞬く間に読者を戦前の遊廓に連れて行ってくれる。男と女の丁々発止はいつの時代も変わらず、覚悟を決めた女の原生的強さ、男の脆さや弱さを感じる。現代と較べるべきではないかもしれないが、人間関係はよりドライになった印象を受けてしまう。
2016/03/03
感想・レビューをもっと見る