河童 (集英社文庫 あ 22-2)
河童 (集英社文庫 あ 22-2) / 感想・レビュー
ミカママ
表題作のみ。馴染みある上高地が舞台(というか舞台のとば口)ということで読んでみたのだが、晩年の著作、ということで精神状態の不安定さと死生観などが反映されて、必ずしも明るい読書ではない。晩年、ご自身河童になぞらえることが多かったそうだが、河童への憧憬が窺える。村上春樹さまも真っ青かっていうくらいのメタファーの多用、それを読み解くだけでも一読では足りない…が、わたしにも時間が足りないので、とっとと次の短編に取り掛かろうと思う。
2023/09/27
ミュポトワ@猫mode
死にたくなる本。本自体は芥川龍之介先生の晩年の作品集になるのだと思いますが、この本は精神的に病んでいる時に読むと心にズバズバと刺さってきて、思わず一緒に逝きたくなる。病んでいる人にとって、幸福は重要じゃない。心が平和であることが重要なの。でもね、社会にある以上、心の平和は無理。平和を手に入れるためには社会から脱出=死ねば抜けられる。っていう発想をしちゃう人は共感できる作品で、思わず一緒に…ってなってしまう本なんです。でもね、芥川先生が死んだ理由は痛いほどわかる。俺もどうにかして、この社会から逃れたいもの…
2022/10/11
優希
何と悲しい作品でしょうか。どの作品からも匂い立つのは死や弱り狂った世親でした。晩年の作品を中心に収録されているので、不安と安定、彼岸と此岸、夢と現の狭間を行き来しているのが感じられます。客観的に理性の中で精神的不安を眺めるということはどのような想いだったのでしょう。幻想的な世界の中で徐々に重くなる世界が読んでいてどんどん気持ちも重くするのですが、これぞ芥川の真骨頂と言えるのではないでしょうか。河童の人間界を皮肉った世界が当時の芥川の精神状態ともとれると思いました。想像するだけで楽しい世界ではありますけど。
2014/08/01
優希
河童忌なので。芥川の晩年の作品がおさめられているので悲しみと美しさがあるように感じます。精神を病み、痛切な思いで描いた『河童』は狂気を絵に描いたようでした。自らの世界を逸脱したかったのでしょうが、自らを皮肉っているようにも見えます。独特のユーモアがありつつ、死生観も伺えます。芥川を偲びつつ、鬱の棘が刺さる感覚に酔いました。
2024/07/24
優希
芥川の晩年の作品がおさめられているからか、全体的に「死」の香りが漂います、それでいながら不思議な美しさも感じるんですよね。幻想的な世界の中でどんどん鬱の刺が刺さる感覚は嫌いではないです。むしろその刺に美しさすら感じます。
2023/03/21
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