子供の領分 (集英社文庫)
子供の領分 (集英社文庫) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆☆ 「子供の領分」は国語の試験問題で読んだ気がする。それを除けば、吉行淳之介は初めて読んだ。感性がすごく良い。思春期の少年が感じるであろう、少しざわざわとした感覚が、見事に文章に表れている。胸を触る悪戯が印象的な「悪い夏」、引きこもりがちな少年とその姉が気になる「窓の中」、足萎えの祖母がうとましくも悲しい「崖下の家」、父とその愛人の女にかすかに隠微なものを感じる「夏の休暇」、少年同士の密かな競り合い「斜面の少年」、裏口入学の疑惑に通じる下宿の女主人の奇妙な大明神「暗い半分」、他に童謡、春の声。
2017/10/14
佐島楓
少年に焦点を当てた短編9編を収録。この本を読むと、吉行さんが早熟な少年時代をすごしたのだろうことがうかがえる。子ども特有の残酷さ、異性への想い、性の目覚め。どれも変化球的にこちらの心に食い込んでくる。「崖下の家」は、吉行さんの自伝的小説だと思うが、すべてが本当ならおそろしく正直な方だと少し怖くなった。
2012/11/10
わった
吉行淳之介の小学〜高校までがわかる短編集です。最初は全て作り話と思っていましたが途中に完全なエッセイが入ることでぐるっと逆転し、もしかして吉行氏がどんな風に人生を歩いてきたかがわかるようになっているのではと気づきます。そこからがまた面白いです。解説もちょっとわからないところもありましたが、丁寧でした。子どもながらの上下関係や微妙な心境の描写がとても上手い。そのうちじっくり読み直したいです。
2017/12/05
マッキー
人生初吉行淳之介。昭和っぽくて、言葉で表現できない少年の気持ちが描かれている。こういう複雑な感情は誰しも持ったことがあると思う。多感な子供がリアルに描かれているのでちょっと読むのに緊張した。表題作と、「悪い夏」「斜面の少年」が好き。
2016/05/15
ちぇけら
「おとな」への好奇心に濁った海の音が聴こえる。自分の幼いからだが欲望の芽に震えるとき、知りたいと思う。何かわからないけれど、とても直視してはいけないもの。まだ自分は知ってはいけないもの。そういうものを見ないふりをしながら、横目で覗き見るのだ。ぼくらはいつかおとなになって、そんな自分の葛藤を忘れてしまう。性を開放してあけすけに笑うことができる。忘れてしまったこどもの葛藤が、鮮やかに蘇ってくるのを感じた。
2018/09/07
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