長距離走者の孤独 (集英社文庫)
長距離走者の孤独 (集英社文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
三回目の再読。初読は高校生の頃、素直なエリート高校生(?笑)だった私にはピンとこなかった記憶があります。ただ、決して裕福に育ったわけではなく、かなり欠点が多く調子の悪い人格でしたのでその意味では分からなくもなかったというところでしょうか。再読したのは30歳前後だったでしょうか。当時、私は世の中の不条理や権威のうさんくささよりも小市民的な幸せを追い求めておりました。そして今回。ある程度の経験を重ね、少しはものを観てきた自分には読み応えがありました。少しは人間というものが分かりかけているのかも知れません。
2016/11/10
こばまり
いずれも哀感漂う8編を収録。中でも表題作のテンポ、疾走感が際立つ。和訳でこれ程なのだから原文はさぞや。私も主人公のように、走る際好んで考えを纏める癖がある。
2018/07/16
ペグ
登場人物に対するシリトーの目はとても繊細で優しい。それはきっと外側から貧困層を見るのでは無く内側に属する者の理解なのではないだろうか?おためごかしの優しさに対する精一杯の反抗は雑草のように逞しく、又(アーネストおじさん)や(漁船の絵)のような作品にしみじみとした愛を感じた。他の作品も是非読みたい。
2016/01/23
ペグ
再読。小説が形のあるものと無いものをないまぜに表現する形態であるなら、この(長距離走者の孤独)は究極にシンプルに仕上げた小説だ。"タッタッタッ ハッハッハッ ペタッペタッと堅い土の上を足はひた走る。(P12)そして目に見えない心の中を独白するのみ。表に現れる言葉と内に秘めた思考。そこに(おれ)の意地がある。(アーネストおじさん)は古いフランス映画(シベールの日曜日)を思い出す。(解説文にも、P224)。持たない者に対しての優しさに溢れるこの小さな文庫本は私にとって大切な宝物になった。
2016/02/08
Ribes triste
粗野だけれど無垢な言葉が心に染み込んでくる。どれも良作の短編集ですが、私が一番心引かれたのは、「漁船の絵」でした。余分な言葉が無い分、言葉にならない溢れる思いが伝わってくるものなのですね。
2018/04/13
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