ドアの鍵 下 (集英社文庫)
ドアの鍵 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
黒い鴉
作家シリトーの分身でもある主人公ブライアンが従軍し、英国領マラヤでの軍隊体験を中心にした後半。そして妻ポーリンとの出会いや結婚・出産、マラヤでの恋人との時間が前後しながら織り込まれていく。俺はブライアンの武骨で反体制的でありながら、常に人間としての情緒に溢れている処が大好きで、近年これほど感情移入して読んだ本はない。特にラスト近くの或る別れの場面。その心の機微の表現に俺は胸が張り裂けそうに感動した。映像表現をも凌駕する文章のパワーに圧倒される。時に人生には‘死’以外にも2度と会えない別れがあるのか。
2013/08/24
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