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浴室 (集英社文庫)

浴室 (集英社文庫)

浴室 (集英社文庫)

作家
J・P・トゥーサン
野崎歓
出版社
集英社
発売日
1994-11-18
ISBN
9784087602548
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浴室 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

トゥーサンは、ベルギー出身のフランス語作家。本書がデビュー作らしい。どう捉えていいのかを語るのは難しいのだが、確かにこれまでにはない小説だと思う。フランス文学らしくはある。しいてこれに似たものを探すなら、やはりロブ=グリエだろうか(残念ながら、解説にもその名前は出てくるのだが)。浴室で過ごす主人公には、およそその理由や葛藤がなく、したがって生の不安や不条理からは遠い(少なくともそのように見える)。小説は開かれてはいるのだが、開かれ過ぎていて、あっという間に突き抜けてしまう。まさに疾走する小説なのである。

2017/04/22

NAO

再読。出口のないなんとも奇妙な話だが、主人公はクールなひねくれ者でありながら、なんとなくユーモアを感じさせる青年として描かれている。恋人とのクールなようでいて親密な男女関係は、いかにもフランスっぽくておしゃれな感じさえする。他者を排除し、害にならない人とだけ接するという閉じた生活がいずれ破綻することを主人公はちゃんと知っている。その前に行動をとらなければいけない、ということも。だからこそ意を決して浴室を出て行くのだが、彼の勇気はすぐにくじけ、その「危険性」よりも「平穏」な世界に舞い戻ってきてしまう。⇒

2019/01/14

harass

初読み。立て続けに翻訳が出ていて映画にもなっていたのを思い出す。手に取ることもなかった作家だが、仏文学者野崎歓の初翻訳だと知り積読していた。形式は三つの章に分かれていて、数行ごとにシーンが終了し、続いたり、切り替わったり。バルトの断章形式を連想し、自由な読み方を指示している。映画の断片のようなシーンが続くが、そっけない内容で困惑してしまうのも計算のようだ。人(読者)を食ったようにクールに突き放すのは、ブローティガンを連想した。個人的にいうとさほど好みではないが、こういう方法もあるのだなと、感心する。

2017/06/04

ゆのん

27歳の男性がある日浴室で生活を始める。このままではいけない、危険を承知で外にでなければと旅に出る。脱力的な文章だが事は重大に違いない。同棲している彼女の事までも疎ましく思う時がある状態。普通じゃない主人公の行動の様に思えるが何となく気持ちが解ってしまう。391

2019/12/22

南雲吾朗

主人公が浴室を中心に生活を始め、そのあと旅に出て再び浴室に帰ってくるという物語。物語自体は大きなイベントや起伏のないモノ。登場人物の自由奔放な性格がいかにもフランスっぽい感じがする小説。 「目的もメッセージもない小説」とよく書評されているが、そもそも、小説事態にそのような高等な意識を持ち込むこと自体がおかしいと嘲笑っているかのような小説である。個人的には、こういう読書は好きである。

2020/01/20

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