カメラ (集英社文庫)
カメラ (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
一人称視点による語りであり、したがって明確な映像を結ぶが、小説の全体像が捉えにくいのはいつものこと。現代フランス文学の潮流を鑑みると、例えばサルトルのアンガージュマンからは遥かに遠いところにやって来たように思う。むしろカミュの末裔とする方が理解しやすいか。さて、この小説だが、それまでは行き当たりばったりのように書かれていたようにも見えるが、最後の1ページのイメージは実に美しくも透明だ。このページだけで一気に小説に昇華されたかのごとくに。似てはいないけれど、『限りなく透明に近いブルー』のラストシーンを思う。
2017/05/19
新地学@児童書病発動中
トゥーサンの小説ではこれが一番好きだ。ぎくしゃくとした日常生活を軽快に描く前半が、後半になったら神秘的な輝きを帯びる。恋人と一緒にイギリスへ旅に出かけた主人公の僕が、船の中で一種の啓示を得る。啓示と言っても大げさな書き方ではない。船室の中で孤独な時間を過ごす時に、主人公の人生の意味が、さりげなく浮かび上がってくる。このあたりの書き方は我が国の村上春樹にも似たところがあって、共感できた。シンプルながら深い余韻を持つ言葉で締めくくられるこの小説の結末も素晴らしい。この言葉は読み手の心の中で反響し続けるだろう。
2017/12/28
KI
現実から切り離されたところに閉じ込められて、眠ったまま生きていたい。
2020/02/20
佐島楓
とても静かな、淡々とした小説。あまり海外(フランス)の現代小説に触れていなかったので、新鮮でした。物語の舞台からしてイタリアの作家だろうかと勝手に思い込んでいたのがちょっと恥ずかしい。
2013/01/02
ミエル
久しぶりのトゥーサン、世界観がやっぱり好み。何気ない、いやなさすぎるストーリー、今回はカメラを持ってモヤモヤ…編みたいな印象。あてがない、一見無機質に見える描写、胡乱な人物たち、ほんとに著者の作品は映像向きだと思う。いつもの読書よりも浮かぶ情景が鮮明な気がする。
2015/03/25
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