天使のゲーム 下 (集英社文庫)
天使のゲーム 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー
のっち♬
行方をくらますクリスティーナを探すマルティンだが、殺人の容疑をかけられて刑事から追われることに。現在と過去を交錯させる著者ならではの手法が今回も効果を発揮するのだが、それ以上に複雑に絡んでくるのが夢や超常的な要素で、従来のサスペンス的な真相追求よりも謎そのものに重層的な含みと限りない広がりを持たせていく趣きが強い。ゴシックロマンスからハードボイルド活劇まで盛り込む展開も卓越しており、多くを語らずに深遠な余韻と謎を残していく静謐で芒洋なラストシーンに至るまで、著者の作家魂と言葉の魔力がしっかりと宿った作品。
2021/06/15
ふう
物語が想像の産物であるように、登場する人々も、おぞましい死も、善も悪も暗闇も時間さえも、主人公ダビッドの中で繰り返される想像なのだろうかと、まるでその頭の中に引きずり込まれているような気になって読んでいました。本の魅力、言葉の力が、人の心をこんなに支配するのかと怖ろしくもありましたが、おもしろかった! 書くことではなく生きることを選んだ女性が、「風の影」のダニエルの母になり、そのダニエルがまた物語の中で生きることになるとは…。抜け出せない本の世界です。
2017/04/11
ペグ
カルロス・ルイス・サフォンは一筋縄ではいかない作家だ。そこそこミステリーを読んできた者として白黒つけたくなる癖がついているけれど、サフォンにあっさりと裏切られてしまった。堕天使(ルシファー)が登場するに至って(主人公の妄想?もしくはミュンヘハウゼン症候群の患者?)色々悩みながら読んだが結局、曖昧に終わる。けれどきちんと納得いく形で「センペーレと息子書店」の人々につながっていく巧みな展開。狭量なわたしの思惑など軽々と飛び越えた幻想小説だった。
2018/03/26
財布にジャック
ハリウッド映画並みのスピード感溢れる展開に、付いていくのがやっとでした。現実なのか幻想なのか、敵なのか味方なのか、頭の中がぐるぐるしてしまい大変なことになりました。後半には前作との繋がりでにくい演出がありニヤッとしてしまいました。いずれ全ての作品が出揃ったら、再読は必須です。それまでは我が家の忘れられた本の墓場で眠らせておくことにします。
2013/08/04
Willie the Wildcat
主観性から偶像・事象を描き、心を扇動・誘導。これがコレッリの求めた宗教の解への道なのか?はたまた、作家としての魂を売るかのような主人公への裁きなのか?天使vs.堕天使。これをゲームと呼ぶのであれば、伴う犠牲の妥当性を如何に解釈すべきかも問われる。生まれたダニエル。『風の影』にもつながる因果応報。終盤の躍動感溢れる時間の流れは、嫌でも次作『天使の囚人』へのプロローグと推察。天使の魂と堕天使の魂の継承。継承の先は、単なる勝敗ではないはずだ・・・。
2017/04/18
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