チューダー王朝弁護士シャードレイク (集英社文庫)
チューダー王朝弁護士シャードレイク (集英社文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
確かにイギリス人あるいは英国史に興味のある人でないと面白みは少なからず減るのでしょう。むかし読んだエーコの「薔薇の名前」と舞台設定は似通っていますが、はるかにこちらのほうが読みやすく感じました。登場人物のクロムウエルと言うからピューリタン革命の彼を想像したのですが(ここら辺があまり英国史を勉強していないのでわかりませんというか忘れてしまっています)異なる人物のようですね。内容は結構楽しめました。5作まで出版されていて訳は3作目まであるようなので読んでみるつもりです。
2016/04/18
ケイ
最後がこれで本当にいいのかと思うミステリだが、独特なスタイルのストーリーでなかなか面白く読める、タイトルにもあるチューダー王朝の歴史を知るいい機会になった。宗教改革という名のもとに行われた弾圧や粛清は、大陸とは少し趣が違うようで、イギリスの持つ王政やブリテンの歴史にも関係している。この作品を読むとこの時代のイギリスの宗教の勢力分布がわかったような気になる。解説から、新教というのは、新興ブルジョワにとって大変に都合のいいものであったようだ。障害を持つ主人公の自立という意味でも興味深い。
2016/03/06
まふ
チューダ―王朝ヘンリー8世治下の英国国教会確立期におけるカトリック教会修道院との抗争を背景とする歴史小説。大変面白く読んだ。チューダー王朝弁護士のシャードレイクが摂政クロムウエルの命を受けて聖ドナトゥス修道院の解体および資産返上を推進すべく乗り込んで次々に起こる殺人事件の犯人捜しを進める。修道院に魅力的な女性が出てきてシャードレイクが血迷ったり、金に目の眩んだ修道僧がいたり、登場人物に人間的な側面が随所に現れ、かつプロット全体が結構現代風なテーマに満たされており、この手もありか、と思った。G1000
2023/09/17
藤月はな(灯れ松明の火)
ヘンリー8世の離婚問題と王位正統権に端を発する宗教改革によって揺らぐ英国の雰囲気を楽しめる作品。『薔薇の名前』のように個性的で清濁を併せ持つ人々も出てきます。私としては事件よりも聡明なアリスの母親が「魔女」として迫害されやすかった施薬者という事で悲劇を迎えるんじゃないかとハラハラしていたので、最後はほっとしました。そして個人的にある意味、世間知らずで内心は傲慢で上から目線のシャードレイクが苦手でした。なのでアリスの指摘には心底、すっきりしました。ラストのガイさんとの人間の複雑性や神の揺らぎの会話が印象的。
2017/10/05
扉のこちら側
初読。2015年996冊め。【41/G1000】イギリス国教会を設立したヘンリー八世の時代。修道院解散がトマス・クロムウェルにより進められる中、派遣された監督官が修道院内で殺害される。弁護士の主人公は事件解決を命じられ、権力者クロムウェルの元で働く一方、障がい者(先天性脊柱後湾症)として差別されてきたために社会的弱者の立場にも近くある。故にふたつの立場で苦しむが、そこが人間味が感じられてよい。恋愛模様は必要ないのではないかと思ったが、物語の主軸として必要だった。
2015/08/18
感想・レビューをもっと見る