ゲルマニア (集英社文庫)
ゲルマニア (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
時は1944年5月7日から6月25日まで。物語の舞台は一貫してこの間のベルリン。時あたかもノルマンディー上陸前夜から上陸後といった時期であり、ベルリンは連日連夜の空襲を受け、瓦礫の街と化していた。そんな時期にヒトラーが構想していたのが壮麗なゲルマニア都市構想であった。この壮大なまでの矛盾に満ちた世界が物語の重要な背景、あるいは物語の構想そのものである。それはすなわちナチのメタファーそのものであるからだ。事件の解決はミステリーとしては、まだるっこしくもあるが、終始一貫して緊張感が途切れることはない。
2019/05/27
KAZOO
ドイツのしかもナチスの時代の警察小説です。主人公がユダヤ人の警察官でナチスの親衛隊員と組んで殺人事件を解決していくという話で、私は戦時下のドイツしかもベルリンがどのような状況であったのかを知ることができて非常に楽しめました。やはりドイツ人はきちんと克明に記録を残していくということでは日本人と似ている気がします。
2018/05/18
藤月はな(灯れ松明の火)
戦況が窮し、市街にも及ぶもまだ、ナチスが負けるとは思わなかった1944年のベルリン。党に対し、優秀な子供を産むことを薦め、実行していた女性たちが殺害された。まるで切り裂きジャックかと思わせる惨たらしい姿で。そこに召集されたのが有能だが、ユダヤ人である理由で職を追われたオッペンハイマーである。ナチスの意向で命が風前の灯火になる、綱渡りの状態の緊迫感が凄まじい。そんな中、ハプニングでシュレイダーと付かず離れずの関係になるが・・・。しかし、色々、あんぽんたんなオッペンハイマーよりも肝が据わったヒルダの方が素敵だ
2019/01/05
佳音
戦争を知らない子どもである著者が様々な資料を元に当時に肉薄する力作。小学生でアンネの日記を読んで衝撃を受け、中学生になったら、フォーサイス作品、『鷲は舞い降りた』『ナヴァロンの要塞』他、鉤十字とあれば、フィクション、ノンフィクション問わず読んだ私でも満足感はある。面白かった・・・。が、ラストはなんだかな~!(・_・)と思う。
2015/12/14
星落秋風五丈原
タイトルはドイツ首都ベルリンが広く国内外で「世界の首都」と讃えられるようアドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された都市改造構想のこと。冒頭にシュペーアの構想を褒めるヒトラーが登場する。彼の構想では1945年に戦争に勝利した後、1950年に完成させるはずだったが、次の場面では瓦礫のベルリンが登場し、ヒトラーの構想が到底叶わないことを示唆。「ナチスに都合のよい犯人を見つける事ができるのか?」というオッペンハイマーの範疇を越える問題もはらむ。
2018/06/16
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