アデル 人喰い鬼の庭で (集英社文庫)
アデル 人喰い鬼の庭で (集英社文庫) / 感想・レビュー
ゆのん
レイラ・スリマニのデビュー作。2作目で、ゴンクール賞を受賞した『ヌヌ 完璧なベビーシッター』と同様に本作も社会と女性の繋がりを描いている様に思える。アデルは本作の主人公で性依存症の女性。夫は医者、可愛い息子もおり、本人はジャーナリストと他人から羨ましく思われる状態でありながら、その内には満たされない思いと彼女をも食い尽くそうとするかの様な怪物が巣食っている。あからさまな性描写が多々あるもののいやらしさよりも彼女の欲望と葛藤が全面に出ているように感じる。衝撃的な作品を紡ぐ作者の次作が今から気になる。
2022/08/16
星落秋風五丈原
裕福な医者の夫、カワイイ息子、傍から見ると何不自由ない生活を送っているはずなのに絶えず渇望している女性。外見からはとんでもない女性に見えるのだが彼女の苦しみは誰にもわからない。
2020/11/10
くさてる
医師の夫と幼い息子を持ち、パリでジャーナリストとして働くアデルには、抗えない性への依存があった。どれだけ自制しても、ほんのわずかなきっかけでアデルは夫以外の男性との性交渉を求めてしまう。繰り返すその行為はやがてアデルの生活を蝕んでいって……という話。官能的な内容ではないし、トラウマがどうこうとか性依存症からの回復という話でもない。ただ荒涼とした主人公の心象風景と夫とのディスコミュニケーションが続く内容で、ちょっとしんどかった。山崎まどかさんの解説は分かりやすくて、本編を理解するヒントをもらいました。
2020/08/15
アヴォカド
『ヌヌ』(面白かった)で注目の作家。解説には丁寧にいろいろ書いてあるが、しかし結局のところ、嫌な味の小説だったな。
2020/07/20
刳森伸一
性依存症の女性を主人公にした小説。と書くと扇動的だが、実際には、その女性の心理と状況(移民であることなど)から女性や移民といったマイノリティの問題を浮き彫りにする硬派な小説。特に主人公の苦しみ(依存症)の原因を主人公自らも、そして読者もはっきりとは分からない状況の中で、ある種淡々と綴る繊細さに作者の力量がみえる。デビュー作ということもあってかやや散漫な気もするが、熟読する価値のある小説だと思う。
2020/10/13
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