新訳決定版 ファウスト 第二部 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ G 1-2)
新訳決定版 ファウスト 第二部 (集英社文庫 ヘリテージシリーズ G 1-2) / 感想・レビュー
ケイ
訳が読みやすいのでさらりと読み終えてしまったが、とても奥の深い壮大な話だ。拙い挿絵をよく見ると非常に意義深く、その場面をよく表している。悪魔メフィストを呼び出すのも契約を交わすのもファウストだが、これは悪魔と神との話で、ファウストはその道具にすぎなく思える。悪魔は契約通りに、ファウストにいい夢を見させた。ただ少し油断をすると、神の容赦ない反撃にあうのだ。ゲーテの描きたかったものを私はどのくらい理解できただろう。次は他の方の訳でもじっくりと読んでみたい。
2014/03/10
かふ
ゲーテの錬金術は言葉によって世界を構築する。それは悪魔主義的なギリシヤ神話の劇詩のパロディなのか。ゲーテの後期の知識の集大成であるという。解説にそのプロセスが紹介されているのでそれを参考にして読むのが理解が早いかも。ただゲーテのギリシヤ悲劇の知識は直接ギリシヤ神話を読んで知っていた方が面白いかも。登場人物の名前からそれらのギリシヤ悲劇が連想される。ヘレナはホメロス『イリアス』の登場人物だという(エウリピデスの「トロイアの女たち」)。
2024/06/24
くみ
第2部はほとんど神話の世界のよう。歌うように流れていく。場面展開がめまぐるしく、歌っていたと思えば、戦争のシーンになり、お金の話になったりするのだが池内ファウストは終始甘くロマンティック。読後の余韻もそのまま残る。さらさら流れるようで初読時の荘厳さは感じなかった。「時よ止まれお前は美しい」のセリフもさらっと流されていたので、読了後に探しにいったほど。これも「ファウスト」か。甘いふわふわしたお菓子を食べたようだった。
2018/10/08
田氏
ファウストが時空も伝説をも飛び越えて飛び回る第二部。そこに人造人間(ホムンクルス)の誕生やら、さらには金本位制から国債本位制への転換みたいな経済の話まで入ってきて、登場人物や合唱隊はあいも変わらずのガヤガヤどんちゃん。この作品、名前だけは知っていたけれど、こんなにもお祭り騒ぎだったのか。ここまでの展開といい、その末に向かえる結末のご都合感といい、異世界チートものだこれ、とすら思える。まあ、そもそも伝説とか神話のほとんどはチートものなのかもしれない。というわけで、わりかしキャッチ―でポップなのだ、この物語。
2024/03/04
ロビン
第二部はダンテ『神曲』のごとく古代ギリシャ、ローマの哲学者やら魔物やらが次から次へと湧き出でて来たり、皇帝に仕えて財政を救ったり破綻させたり、冥界に下りてみたりとゲーテの詩世界は第一部より更に豊穣にして混沌としている。ドイツ語が分かれば韻や詩型も楽しめるのだろうに。書斎でひとり死を思っていた学者ファウストは、「行動」することによって愛や自由な土地を得て、満足して死んでゆく。ゲーテは幸福は悟性や思惟のみでなく行為によって得られ、それは「永遠の女性的なるもの」によって導かれねばならないと考えていたのだろうか?
2019/04/24
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