失われた時を求めて 1 第一篇 スワン家の方へ 1 (集英社文庫)
失われた時を求めて 1 第一篇 スワン家の方へ 1 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
作中の「私」は、物語ることによって過去を回想しているのだが、それらの過去の空間と時間とはそれがまさに個的な回想であることにおいて、半ば渾然としつつ、まさにたゆたうのである。したがって、ここに描き出されるコンブレーも今では時空の彼方にあるのだろう。そして、回想される「私」も時には寝室でママンのおやすみを待つ幼年のようでもあり、ゲルマント公爵夫人に焦がれる青年のようでもある。ワイルドは「自然は芸術を模倣する」と言ったが、ここでは「書く」行為においてこそ「私」のほんとうの「生」が芸術として生き直されるのだろう。
2013/11/29
ケイ
最初の50頁を読み比べて、こちらの鈴木氏の訳が岩波版より読みやすいが、解説の関係で岩波版を読了。最初の前書きも端的でわかりやすい。また巻末の人物100人の紹介や、家系図も大変参考になるので、この一巻を手元に置いて、次巻に取り掛かることにする。全七篇のあらすじは一巻ごとに読むことにした。
2015/10/03
s-kozy
「いつか読んでみたいな」と長い間思いつつも流石に敷居が高く、なかなか踏ん切りがつかずにここまで来てしまいました。それがG1000コミュやその中の派生イベントに参加させていただくことで背中を押され、ついに手に取りました。まだスタートしたばかりですが、まず感じたのは「読んでよかった」ということ。全部でいくつあるかは分かりませんが、この本は読書することの喜びを確実に味あわせてくれます。この「記憶の小説」とも呼ばれる本作の書き出しは幼少期の母親との思い出からスタートします。幼い男の子が持つ母への淡い(続く)
2015/09/17
夜間飛行
寝床で甦る記憶の切れ端から物語は動き出し、幼年期の明るさへうねるように遡る。繊細で神経質な、むせ返るばかりの母への甘え、微かな罪の匂い…たった一言母にお休みをいってもらう為の苦悩は様々な愛の変奏へと引き継がれる。小説家ベルゴットへの傾倒…彼と親しいというだけで語り手はまだ見ぬスワンの娘に恋い焦がれ、ベルゴットが少女を城や聖堂へ連れて行くという夢想が、閉ざされた日常に風穴を開ける。「スワン家の方へ」は、母への愛から美と性に目覚めていく少年の夢であろう。そこに咲くサンザシの白は、時に官能のバラ色を秘めている。
2015/11/26
たーぼー
ふとしたことからフラッシュバックされる光景に自己との隔たりを感じようか。そして彼らの強い感受性ときたら。行動や想いの一つ一つが反面としてさして美しくもなかった己の記憶の断片を、かつて親しみのあった人々を呼び戻してくれる。全くの他者と割り切れない、ある意味憎らしい物語だ。甘美な言葉達の開花の中に時間の追求、芸術論、社会的階級が及ぼす人間模様等あらゆるテーマが盛り込まれているからぼんやりしていると迷子になるし正直入りこめていない部分もある。只、手探りながら進んでゆく道の先に何か得体の知れぬ快楽がありそうだ。
2015/07/14
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