トルストイ ポケットマスターピース 04 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
トルストイ ポケットマスターピース 04 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) / 感想・レビュー
優希
『戦争と平和』がダイジェスト版になっていたものの、他の作品は全て短編で新訳でした。人間の意識や肉体を巧みな筆致で描き出し、ユーモアまで織り込むのはまさに小説の魔術師と言えるでしょう。トルストイの作品は有名な『イワンのばか』ですら読んだことがなかったので、今回この本を機にトルストイの作品に触れられて良かったと思います。大長編『戦争と平和』もいつかチャレンジしてみたいと思いました。かなり読み応えがありつつ、トルストイの入り口としても短編集としても楽しめるのでお得感があります。
2016/02/12
紙狸
2016年刊行。加賀乙彦編。紙狸は「トルストイと戦争」という関心からいわゆる「セヴァストポリ三部作」を読みたくて見つけた。この本には3部作の一つ「五月のセヴァストーポリ」を収録。翻訳は平明。(岩波文庫には三部作の中村白葉訳があるが、日本語として古く、軍事用語が難解。)「五月のセヴァストーポリ」を読むと、トルストイ自身が将校としてこの地で戦った体験を持つことが、将校たちの心理や戦場の描写を通じて伝わってくる。晩年の名作「ハジ・ムラート」も収録。トルストイの膨大な作品群からよくぞ選んだというセンスのよい選択。
2024/09/09
おおにし
NHK海外ドラマで「戦争と平和」が始まった時に本書を購入。ダイジェストと抄訳を読みながらドラマ(8回シリーズ)を観て、この壮大なストーリーの流れは掴むことはできたが、これでは物足りない感じ。やはり全編を最初からじっくり味わいたくなってきた。特にピエールとナターシャが結ばれるまでのロマンはじっくり読みたいところ。そろそろ光文社古典新訳文庫で出てくれないかなあ。
2016/11/27
メルキド出版
「イワンのばか」幼少のころ「わらしべ長者」「赤ずきんちゃん」「三匹の子ぶた」「人魚姫」「みにくいアヒルの子」「あおひげ」「走れメロス」などと並んで大好きだったお話。お恥ずかしながら原作どころかトルストイの文章を読むのは初めて。短篇の名手コルタサルが優れた短篇としてポー「アモンティリャードの酒樽」、ボルヘス「円環の廃墟」、ヘミングウェイ「殺し屋」と共にトルストイ「イワン・イリッチの死」を挙げていた。物語の終盤「手のまめ」は強く記憶に残っていた。皮肉を逸脱した寓話だが道徳倫理を超えた労働小説として読めるだろう
2023/01/01
がんぞ
『戦争と平和』は1/5に縮小、おもにナターシャの少女時代からモスクワ脱出を乗り越え(祖国勝利と荒廃)典型的ロシア主婦となるまでを追う。宗教的論説的な部分は削除、ちょっと香りのない珈琲みたい/初期作品『五月のセヴァストーポリ』は『西部戦線異状なし』同様、戦場の真実を描く/『吹雪』は鈴木三重吉『少年駅伝夫』と鮮やかな対称/晩年に『ハジ・ムラート』(戦うのは正義、避戦は卑怯、卑劣。第一に守るべきはプライド=恩人つぎに妻子つぎに部下)を書いたトルストイは断じて平和主義ではない。それで『イワンのばか』は見劣りがする
2017/09/12
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