書楼弔堂 炎昼
書楼弔堂 炎昼 / 感想・レビュー
starbro
京極夏彦は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。書楼弔堂シリーズ2作目。明治期の著名人、文化人が多数登場する歴史ファンタジー、楽しく一気読みです。柳田國男まで登場するとは思いませんでした。明治時代の書物が与える影響力は多大なものだったんでしょうネ。明治グランドファザコン物語もしくは京極夏彦版『逃げるは恥だが役に立つ』としても読めました(笑)京極作品としては怖さ10%程度です。
2016/12/23
紅はこべ
若い女性の読書に導かれた成長物語。年の差はあれど、『やんごとなき読者』を連想させる。弔堂が塔子に『小公子』の次にどんな本を勧めたのか、知りたかった。乃木希典は軍人に不向きだったのか。悲劇だな。不勉強にして、柳田國男が新体詩を書いていたのも知らなかった。女が本を読むことを禁じられる家庭に育つって辛いな。樋口一葉は母親の意見で上の学校に行けなかったけどね。平塚雷鳥の描き方が微笑ましかった。塔子の行く末が知りたい。塔子のような人の方が、美音子みたいな勇ましいことを言う人より革新的なことを成し遂げる気がする。
2017/03/01
勇波
待ちに待った『炎昼』。本書から与えられる読書の時間が貴重と思わせてくれる作品群です。「オレ今本を読んでる〜」ってな感じになります。「虚実妖怪百物語」を先日読んだとこなので、内容のギャップの凄まじさに驚く。が、落ち着いて考えてみると伝えたい本質は同じなのかも。。最後の『常世』は鳥肌もの。「生きている者の心こそがあの世」とな。文庫化まで待つつもりの方々、もったいないですぞ。単行本の重厚感と共に味わう作品だと思いますよ★
2016/12/03
ケイ
『「書舗かね。こんなところに」 「わたくし、迷った時はそこに行きます」 「迷いがなくなるかな」 「なくなりません。でも、逃げ込むには良い所です」 「なら、行こうか」』鬱鬱とした少し先に見える書楼弔堂。死者の世界は生者の中にあるから、生きてこれを読む私たちは松岡氏に会える。維新のあとの偉人達が呼吸している。維新の立役者、女性の活動家、陸軍の大将。片眼のことで尚更母に愛を示す優しい立派な方だと京極さんが店主を通して大将を語る。そして、恋に破れた松岡に店主がすすめる書物に愛をみる。偉人たちと霧の中で過ごす読書。
2018/05/24
星落秋風五丈原
まだ何者にもなっていない後の有名人が、ある本を求めてやってくる。稀覯本を数多く持っている弔堂は、しかし普通の書舗ではなかった。「これぞあなたの一冊」と店主が選んだものを差し出すのだ。それ以外のものは、望まれても売らない。主客転倒である。前回の主人公高遠に代わって主役を務めるのは、薩摩出身の祖父を持つ塔子だ。暮らし向きに不自由はないが、男子がおらず、家を存続させるために、塔子は婿を取らなくてはならない。士農工商の身分がなくなったとはいえ、何もかもが自由ではないのだ。
2016/12/26
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