意識のリボン
意識のリボン / 感想・レビュー
ヴェネツィア
短篇と掌編を合わせて8篇を収録。17歳で華々しくデビューを飾った綿矢りさも齢30を重ねるようになった。本書はそんな彼女の" リアル"を様々な手法で表現したもの。ただ全体としては、それがこの人の持ち味だとしても、やや軽すぎるようにも思われる。かつて『蹴りたい背中』で「さびしさは鳴る」と鮮やかなまでの"軽ろやかさ"を表出した綿矢だが、ここには残念ながらその勢いはない。もっとも、ここから更に綿矢の作家的な成長が続くのだろうが。それを信じたい。なお、表題作は臨死体験を描く異色作。これが綿矢の「死と再生」となるか。
2020/10/27
しんごろ
物語?エッセイ?とにかく頭の上に?がいっぱいつく不思議な感じの作品でしたね。日常のとらえ方が女性ならではなのか、綿矢りささんならではなのか、さりげなくて、話は忘れてしまいそう(^^;)綿矢りささん独特の表現というか、例えというか,比喩というか、癖になる文章が好きになりましたので、他の作品を読んでみたいですね。八つの短編の中では、表題作の『意識のリボン』が断トツで良かったです。
2018/01/25
さてさて
『短編には、自分が主張したいことや何か強く思っていることというより、生きていて、ちらっと感じたことや好奇心をもりこめる喜びがあります』、と語る綿矢りささん。綿矢さんの作品を読んでいると、もしかして、これは作り話ではなく、綿矢さん自身のことを書かれているのではないか、そんな風に感じてしまうのは、短編の中に盛り込まれた綿矢さんの主張がそこに色濃く感じられるからなのかもしれません。圧巻の内面描写と、ハッとする表現の数々に魅了された逸品。サクッと楽しめる短編の中に、ふっと奥行きを併せて感じた、そんな作品でした。
2021/04/02
❁かな❁
エッセイ風のものも含まれる8編の短編集*とっても好き♡綿矢さんらしく毒気を感じ脳内ダダ漏れのものから結婚、出産を経て新境地開拓されたように感じるお話もある。「岩盤浴にて」は、めっちゃわかる〜って感じで面白かった♪「こたつのUFO」の「つらいとき、悲しいとき、女子、自分のおっぱいをもめ」に笑ってしまう!「怒りの漂白剤」も吐き出しまくりで面白い!「声の無い誰か」と表題作は母になられたからこその深みを感じる。表題作では母と娘の両方の気持ちになり涙。最後の章にぴったりのお話だった*綿矢さんのエッセイ読みたいな♡
2018/03/06
風眠
とっても可愛い装丁だけれど、中身は可愛くない。一人称で語られるそれぞれの思考・心情が、どこまでも深く掘り下げられていくのだから、可愛くなくて当たり前なのだけれど。時に毒づきながら、時に自虐的になりながら、ひとりの人間の中で繰り広げられる思考の数々。性別や年齢が違っても、共感できるところがいくつもあった。『ベッドの上の手紙』では、女の人より男の人のほうがロマンチストなんだなぁ、なんてへらへらしながら読んでいたら、ラストで少し泣いてしまった。どうしてかは分からない。けれど、心がしんとした。なぜだか、とても。
2018/02/14
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