鏡の背面
鏡の背面 / 感想・レビュー
starbro
篠田 節子は、新作中心に読んでいる作家です。500P超、面白く一気読みしました。聖母+社会弱者シェルター+アルコール依存症+後妻業+オカルト、万華鏡の様な骨太の作品ですが、最後にもう少しサプライズが欲しかったなあ。
2018/09/07
パトラッシュ
誰かを殺してなりすまそうと目論むなら、ターゲットは社会的立場や財産や縁戚知人のない人が好ましい。入れ替わりが簡単だし、戸籍を乗っ取っても疑われないから。しかし資産家の元お嬢様という著名人を狙った結果、周囲に気づかれぬよう必死に偽装工作を施さねばならなくなる。自分本来の姿を一切表に出せず他人になり切る生活を何年も続け、財産を奪って逃げられないのは拷問に等しい。男を食い物に生きてきた女は「こんなはずじゃ」と嘆きながら、そのまま自分を捨てた方が楽になってしまった。半田明美の一人称で展開したらもっと面白かったか。
2021/03/10
utinopoti27
『彼女はなぜ、どのようにして聖母にすり替わったのか』焼け跡から見つかった焼死体は「聖母」のものではなかった・・。精神を病んだ女性たちを献身的に支える「聖母」・小野尚子になりすました女とはいったい何者なのか。次第に明らかになる驚愕の真実に凍り付く・・。稀代の毒婦・半田明美を通して、自己意識とは何か、人格とは、再構築される記憶とは等々、人の精神性の根源に鋭く迫るのが本書です。文学界の重鎮・篠田節子の圧倒的な筆力が紡ぎだすミステリは、読み手のアイデンティティーを根本から覆すほどの魔力に満ちていました。
2018/12/07
いつでも母さん
『聖母』(せんせい)と慕う「小野尚子」が入居者を庇い死んだ。女たちのシェルターで支柱となっていたその人は本当は誰?500頁強の長編、読み進めるほどに誰も信じられなくなる。支えを失ったシェルターは・・篠田作家巧いタイトルをつけたものだ。鏡に映ったのは私?その裏は?人は見えるモノだけを信じたいのだ。そこではそれでいいんだ。傷つき救いを求めて生きるには彼女の『存在』だけが真実だったのだ。ん~ん、きっと私はこの本質を読み切れてはいないのだろうな・・疲れた読書になった。シェルターの存在が哀しい社会なのだなぁ。
2018/09/02
Richard Thornburg
感想:★★★★★ 待ちに待った篠田節子センセの新刊です。 薬物依存症患者やDV被害者の女性たちの暮らす施設で発生した火災で「先生」こと小野尚子は入居者を救出して死亡。 ところが警察より「小野尚子」の遺体は別人のもので、しかも連続殺人容疑者であった「半田明美」のものではないかというところからストーリーは始まります。 「小野尚子」は私財を擲ってでも皆を救おうとする「聖女」のような存在であるのに対し、成り代わっていたとされる「半田明美」は稀代の悪女。
2018/11/26
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