アタラクシア
アタラクシア / 感想・レビュー
ヴェネツィア
6人の登場人物それぞれの視点から語られる物語。この小説においては、リアリティのあり方が通常のそれとはかなり違っている。彼ら同志で語られる会話は、互いに親しいはずであるにもかかわらず、いたって論理的、分析的であり、その意味では非日常的である。とりわけ由依は、その行動や思考が捉え難い。それは夫の桂にとってのみのことではない。また、小説作法も文体も違うのだが、どこか三島のそれを思わせる。そして、タイトルの選び方などからは倉橋由美子との相通性も感じるのである。いずれにせよ、小説を読む楽しみに満ちた作品である。
2022/01/10
starbro
金原 ひとみは、新作中心に読んでいる作家です。本書は、ヒリヒリする仏蘭西被れ平静不動東京不倫恋愛事情でした。やはり「不倫は文化だ by 石田 純一」ということでしょうか? 【読メエロ部】
2019/06/10
うっちー
私にはわからない世界でした
2019/06/16
モルク
フランス帰りの元モデルの由依と小説家の夫桂。人妻と知りながら彼女と逢瀬にはしるシェフ瑛人。瑛人の店のパティシエ英美は浮気夫と口煩い実母そして反抗的な息子に悩み、出版社に勤務する真奈美はDV夫に悩みながらも不倫をやめられない。誰もが問題を抱えながらも表にはあらわさず…複雑な人間模様、何かモヤモヤしているうちに最終章を迎える。こんな過程がありそして衝撃が…それぞれ正直に生きている…が、反対に自分を隠して生きている荒木が気になってしかたがない。
2020/02/02
ちゃちゃ
人は愛という希望を失うと、孤独という絶望の淵へと落ちてゆくのだろうか。未来へと繋がる生の「確かさ」を見いだすことができず、信じられるのは今この瞬間だけ。「アタラクシア」―乱れない心、乱されない心を求めるも、人は狂おしいほどに愛を求め、愛に苦しむ。たとえそれが刹那的で倒錯した愛であっても…。物語は由依と夫の桂、不倫相手の瑛人を主軸に、彼らを含む6人の視点から描かれる。ひりつくような痛みを伴う鋭く繊細な心理描写や巧みな人物造形が、それぞれの愛と承認への渇望を浮き彫りにして、幸せとは何かを問いかけてくる。
2019/11/18
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