床屋さんへちょっと
床屋さんへちょっと / 感想・レビュー
taiko
父が起こした製菓会社を潰してしまった2代目社長宍倉勲の半生の連作短編集。引退し、自分の墓を探しに行く話から始まり、時代を遡りながら話は進んでいきます。各話には、床屋と娘と潰してしまったシシクラ製菓が必ず寄り添い、勲の人となりを語るキーとなっています。勲自身が、個性がなく先代社長に見劣りすると思っていた自分。最後の章は娘香目線で語られますが、天然だけど、カッコ良かった父、葬儀には、びっくりする程の人が集まった人徳のあった人だったという話には、続く↓
2015/12/29
あすなろ
床屋をテーマに、引き継いだ会社を潰してしまった男性とその家族の連作ストーリー。時系列は、最初と最後の章以外は過去へ遡るところが以外に新鮮だった。ドライに描いているが、良く感情が伝わってきます。最後に至り、至らないと自分で悔やんでいた、曰く二代目が、実は皆に好かれていた、更には娘も便りにしていた、という結末が心にじんわりとした。不思議に印象に残る、派手さはないが秀作として記憶に残る作品になると思う。一昔前前までは、行きつけの床屋で皆、話していたもんですね。今や、自分も安い流れ作業の床屋へ行く始末。
2015/04/18
昂 ふたたび
私には、「いいとこ床屋の縁の下」でお腹一杯でした。何十年ぶりに聞く、フレーズに笑みが溢れました。子供に聞いたら、「何それ」と。おい、泣くなです。香さん、勲さんに、似てきましたね。父から娘に孫へ。真面目に生きていくことの大変さ、素晴らしさを。ほのぼのとさせられました。私も、歯医者は、ちょっとです。
2015/06/03
ちはや@灯れ松明の火
椅子に掛け向き合う鏡の中には、長年つきあってきた自分の顔。祖父、父、夫、会社員、経営者、そして息子へと巻き戻る記憶。時代の流れに伴って立場は変わっても根っこはずっと同じまま。平凡な、けれど平坦ではなかった人生。父が興した会社を潰したことへの苦い悔恨、仕事を通じ出会った人々との縁、明るく楽しく支え続けてくれた妻、反発しぶつかりながらも父の背を追いかける娘。いいことばかりじゃない、いい人ばかりじゃない、でも、弱気を切り落とし、不安を削ぎ落し、こざっぱりとしたたったひとりの自分を鏡越しに見つめる。まっすぐに。
2011/11/20
takaC
時間遡行形式面白いなあと思っていたら、最終章「床屋さんへちょっと」にはびっくりさせられました。表紙絵、グレーのシャツ&青いパンツの人が二人背中に腕まわして並んで立っている絵だと思っていました。今さっきまで。(笑)
2011/02/26
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