淡雪記
淡雪記 / 感想・レビュー
そうたそ
★★★★☆ 馳版ノワール風「フランダース犬」とのこと。随所に本家「フランダースの犬」と重ね合わせてしまう場面がある。結末は結局そうなるよね、と馳星周の読者なら予想はついてしまうのだがそれでも読んでしまう。北国を舞台に繰り広げられる、苦難の過去を抱え苦難の人生を生き抜く男女。そして二人が出会い知る純愛。男の方はともかく、ヒロインの有紀はどうにかしてあげられなかったものかとも思うが、今後の彼女の人生を思い描く限り、最良の選択肢はやはり本作での結末通りのものだったんだろう。馳作品には珍しくハッピーエンド。
2017/10/18
銀河
現代版フランダースの犬?という前知識を持たずに読み始めたため、障害のある女の子を保護者の目を盗んでつれ回す怪しいカメラマンの話かと最初は不快だった。が、全然ちがう、純愛の話であった。敦史の先を読んだ行動に感心していたら、途中からスピード感のある展開。何度も繰り返される叶わない約束、優しい嘘。北海道の想像を越える寒さと、失われる命、汚れていく手。悲しい。有紀と敦史がどうにか救われてほしいと本気で祈りながら、夢中で残り少ないページを捲った。自業自得と言えばそうなんだけど、この世界に入り込んでしまった。
2011/04/30
あつひめ
どさんこ作家の馳さん初読み。冬の大沼・函館が舞台。雪深く音や世間の目すら消してしまう雪の中で愛し合う二人。初めから淡々と心に鎧を纏ったような敦史。雪の中でこぼれるような笑顔が似合う有紀。どこかで歯車がずれたのではなく最初からずれた歯車の二人。馳さんの二人の真っ直ぐな想いと心の奥底で歪んだファインダーを覗くような生き方を二重に表現しながら物語が進んでいく。いい人と有紀と同じような視線で見ていた私には敦史の仮面が剥がれていく様が破滅への道行のようで切なくて。馳さんの狙い道理の反応だったかな?この感想。
2011/06/05
あっ!chan
おぞましい時間を過ごしてきた二人が、出逢うべくして出逢い、お互いに引かれ合い、最後の最後まで愛しあい、そして最悪の瞬間を迎える…主人公敦史のやったことはけっして許されないことではないかもしれないけど、純真無垢な少女有紀と駆け足で過ごした幸福な時間は、過去の不幸を乗り越えた神様からのご褒美だったかもしれない。ベタな展開にも関わらず、最後の方はドキドキしながら一気読み。冬の北海道の雪の世界が悲恋の物語に、そしてモチーフとなった「フランダースの犬」の物語にもぴったりだ!
2015/08/28
rairai
お借りて読みました。とりあえず有紀ちゃん超かわいい。ほんと妖精さん。人が沢山死ぬけど、主人公が持っている雰囲気からか生々しい感じがせず、すとんと読めた。ラストも報われないのに嫌な感じがしない不思議な作品でした。読んでいる最中、ずっと雪景色が頭の中に広がってて雪好きな私には幸せな時間でした(笑)
2013/07/15
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