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なずな

なずな

なずな

作家
堀江敏幸
出版社
集英社
発売日
2011-05-02
ISBN
9784087713770
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なずな / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

堀江敏幸にとって、これまでで1番長い(通常の2冊分くらい)小説。ただ、堀江文学の中では純文学の"純"度が最も低い作品だ。弟は海外で交通事故、義妹は産後すぐ入院し、40代独身の菱山が2ヶ月の乳児の世話をするという、相当に無理のある設定。また、登場人物のいずれもがステレオタイプ化され、役柄が固定されていること。ただし、見方を変えれば、そこには豊穣な物語作家としての堀江がいる。何ものにも置き換えることのできない、まだ生を受けて3ヶ月にしかならない世界で唯一の存在である"なずな"。堀江の生命への慈しみは深い。

2014/10/03

ゆみねこ

堀江敏幸さん、初読み。拠ん所ない事情で生後2ヶ月の乳児の姪を預かることになった地方紙の記者・菱山秀一。独身の40代男性の戸惑いながらの子育てと彼の周囲の温かな眼差し。なずなちゃんの成長を我が子の幼かった頃と重ねて思い返したり、素敵な1冊を堪能させてもらいました。赤ちゃんの持つ力は何物にも変えがたい。

2021/02/07

なゆ

何故、四十代独身男性がたった一人で育児を?ハラハラしながら読みはじめる。やむをえない事情から生後二ヶ月の姪っ子を預かり育てている菱山秀一。地域の新聞記者で在宅ワークできるとはいえ可能なのか?とかイロイロ気になるが、次第にその赤ちゃん“なずな”の存在を中心に読んでいるように。表情、動き、喃語、秀一が注意深く見つめるなずなの変化が楽しみになってくるのだ。地方の開発的な部分やローカルな話題の取材、気にかけてくれるご近所さん達との交流などじんわりとした味わい。この後のことを書かないのが、切なく甘酸っぱい余韻に。

2020/06/13

七色一味

読破。分厚い。その厚さに、借りた日から毎日少しずつ少しずつ読み進めてきた。今そこに生後間もないなずながいる。たったそれだけで、なずなを取り巻く環境は、全てがなずなを中心に動いて行く。父子家庭のお話かと思いきや弟夫婦の赤ちゃんを預かっただけのよう。思うように睡眠の取れない、普通なら愚痴の一つや二つ悪態の一つや二つこぼれ出ても仕方のない状況なのに、淡々と進む頽廃的な物語は、何の変哲もない生活の中に、ぽんっと赤ちゃんを放り込んだだけの、ただそれだけの物語。その筈なのに──。なずなは、まるで優しさの塊のよう──。

2013/02/16

紫 綺

弟夫婦がトラブルになり、生まれて間もない姪っ子を預かることになった、独身兄の子育て記。未体験の男にこれは辛いだろうな。それでも赤ん坊と共に、少しずつ成長していく姿は好感が持てる。特にこれといったストーリーの展開もないのだが、なぜか引き込まれる文章だ。赤ん坊の細かい表情等の描写は、跳び抜けて秀逸だ。今は生意気ばかり言う我が子たちの可愛い乳児期を、鮮烈に想い出させてくれた。

2012/07/08

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