糸車
糸車 / 感想・レビュー
やま
2016.08発行。大活字版。物語の発端は、蝦夷松前藩一万石の家老・日野市次郎が、江戸藩邸で藩士・村上清蔵に斬られ、命の危険を感じた息子・日野勇馬が、藩邸を出て町中で身を潜めます。江戸からの飛脚で夫が死に、息子の消息が分からないことを知らされた母・お絹は、単身松前から江戸へ出て来ます。お絹は、江戸深川の裏店で住み、息子を探すため小間物の行商をし、奉行所定廻り同心持田の探索を心の支えに、深川で知り合った人達との人情を大切に生きて行きます。🌿続く→
2021/03/09
ぶんこ
母は靭し。 江戸藩邸で殺された夫、行方不明になった息子を探す為に江戸深川で小間物の行商を始めたお絹さん。 息子の為なら、どんな事も耐えられるものなのかと、その生き様に驚かされました。 まだ15歳では、母の気持ちを汲む度量は持ち合わせなかったのでしょうが、結末が切なすぎました。 もっと切なかったのが同心の持田勝右衞門さん。 いい人だったし、いい家族だったのに。 ため息が出た読後感でした。
2015/12/14
はつばあば
子供が成人式を迎えるまで、私も夫は2の次で母親としての務めに励んでいたけれど・・今になって思う。子供なんて別所帯を持てば・・(ノД`)・゜・。元家老の奥方でありながら行商に身をゆだね、息子を探しながら人の相談にのったりノラレタリ。下町の情緒たっぷりに、ほんのり恋が匂い立つ。母親に優しい息子を私も持ってみたいと思っていたが、人が持つ甘えたヤキモチに怖気をふるう。恋をしらずに嫁ぎ、男盛り・女盛りに恋をすりゃ、これは本物じゃ。あ~、何故、持田の手を放した・・たった1度の人生なのに。
2016/01/25
キムチ
久しぶりの宇江佐さん、はずれないなぁ。今回も宇江佐さんの分身的な香りぷんぷんの女性が登場。なんたって強い、このお絹。松前藩の騒動で不慮の死を遂げた夫、その直後に失踪した勇馬を探すべく江戸に出た彼女。深川の人情味あふれる世界が色濃く展開する中で、何かと心配ってくれる同心、持田への気持ちが揺れさざめく・・味方、それとも。時代物は大半が人情話、落としどころを弁えしっかと着地させてくれる。時には飽いてしまうほどに。現代に置き換えてもこの男女と周囲のごたごたは設定可能なサスペンス。
2015/06/29
ドナルド@灯れ松明の火
人情ものかと思って手に取ったのだが、理不尽な藩による江戸詰めの家老だった亭主の殺害と息子が行方不明になり江戸で息子を探す話だった。息子を探すために江戸に来たお絹は、長屋に住み小間物の行商で息子を探し求める。息子探しの話を下地に、行商で知り合った人たちの恋の話が描かれる。不良娘の縁談をまとめたりしたが、探し求めた息子は予想だにしなかった形で現われる。気にしてくれていた持田同心との淡い恋も何だか切ない。バックに宇江佐さん得意の松前藩国替えもからみ深川へ心残しながら移封先梁川へ旅立つ親子の後ろ姿が目に浮かぶ。
2013/06/10
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