壺中の回廊
壺中の回廊 / 感想・レビュー
たま
昭和初期の歌舞伎座3部作の最初の作品。TVドラマ『中村仲蔵』が面白く、芝居の内幕ものが読みたくなって。初めは役者(芸名)と役名、役者間の人間関係に苦労したが、途中からは様々な層の人々(財閥、貧民、暴力団、左翼etc.)の風俗小説として楽しんで読んだ。殺人事件とその解明もあるが、それよりも旧弊な歌舞伎座(木挽座)の労働争議と築地小劇場の左翼志向の対比、また立女形荻野沢之丞と労働争議に加担するその弟子寛右衛門(多分中村歌右衛門と翫右衛門がモデルでしょう)の心の綾に引き込まれた。続いて次作も読む予定。
2022/12/03
星群
昭和5年。不景気の中、特高の存在に怯えながらも、ストライキやサボタージュを目論み、自分達の生活水準を上げようと人々が奮闘していた、そんな中で起きた事件。前半は登場人物が多くて読み辛かったが、後半は真相が気になって一気読み。O氏が一番怖い。この頃の歌舞伎を観たいと思った、舞台裏も。
2021/02/15
ヨーイチ
冒頭に木挽座と主人公の描写がある。大震災後の帝都復興・江戸の残り香の焼失・社会主義運動の高まり、等が示される。劇界から見た「あの時代」の雰囲気が活写されているのは流石で堪能した。登場人物に歴史上の人物が殆ど出てこない(築地小劇場・土方与志はご愛嬌)のは歌舞伎好きには寂しいが、内容的に仕方が無いのは直ぐに分かった。作者自身が「元幕内の人」なので尚更である。旧劇側から見た社会主義運動と歌舞伎、つまり前進座の発端とか新劇の周辺辺りの描写は興味深い。続く
2021/12/19
ミエル
思いの外読み進めるのに時間がかかったのは、シリーズ三部作の読み順を間違えたせい。2作目にワードのみ登場していた「先の事件」について流し読みしようとしたけど甘かった。歌舞伎座もとい木挽座を舞台にしたミステリー、ボリュームも内容も濃密な作品で読み応えありすぎる。思ってたのと違うーといった急展開な後半に至るまでが長すぎな気もするけど、芸事のしきたりや所作の細かい描写が省かれてしまっては作品の魅力がかけてしまうので仕方ない。と、失礼ながら斜め読みする隙もない大作でした。
2024/05/06
Yuzi Kage
シリーズ新作、愚者の階梯が出たので図書館順番待ちの間に旧作を読み直し。 シリーズ三部作となってますが実際は2005年の非道、行ずべからずから共通の登場人物の長編シリーズ物になります。現時点で全6冊です。 昭和5年(1930)、松竹歌舞伎座をモデルにしたと思われる木挽座で人気役者が毒殺されるミステリー。 前半が歌舞伎の舞台裏、後半がミステリーで両方楽しめました。特に劇場の舞台裏の描写は毎度見事ですね。自分が楽屋に居るような気分を味わえます。
2022/11/16
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