鏡の花
鏡の花 / 感想・レビュー
*すずらん*
正直 初めはこの作りに馴染めなかった。誰かが死んだり自分を責めたり…でも段々と、何人かの死を経験してきた自分へと重なった。あれが最期だとわかっていたら、もっと自分にできた事があったんじゃないか、あんな事言わなければ…もし?を繰り返し、沢山の後悔をした。遺された者は必ず自分を責める。そしてその痛みを故人への罪滅ぼしの様に、忘れたくないと思う。だけど翔子は言う。「ずっと同じでいたいのに」そう 生きていく限り、同じ形のままの想いはない。でもそれは悪い事なんかじゃない。忘れる事は生きていく事だと、私は思うから。
2013/11/09
hiro
道尾さんの新刊が出たので内容も知らずに図書館で予約した。そのため、一章を読み終え、二、三章と読み進めていくと、各章の登場人物は同じなのに、その人は事故で亡くなったはずと、辻褄が合わなくなってきた。デジャブ、パラレルワールドと思っていると、5章までの話が最終章の6章で、まとまる構成だとわかって、期待して6章を読んだ。そして最後に5つの話が合わせ鏡となって、6章『鏡の花』では6家族の不思議な群像劇が見事に完成していた。改めて、事故で死ぬのと、‘ヒヤリハット’で終わる違いの大きさを感じた、大変面白い作品だった。
2013/12/31
🐾Yoko Omoto🐾
この連作短編集には、3組の家族と2組の姉弟が登場する。各章では、様々な理由でその中の誰かが亡くなってしまう「似ているけれど同じではない世界」が不思議な繋がりを持って描かれる。些細な行動や言動、「あの時こうしていれば」「こうしなかったら」…不確かな因果関係に人はさ迷い苛まれ、また光を見出だす。最終章を読み終えた後、彼らにとっていったいどの世界が「鏡のこちら側」で「向こう側」だったのか、えも言われぬ不思議な読後感に包まれる。強くも儚く繊細な道尾氏ならではの世界を堪能できる秀作。
2013/09/10
紫 綺
登場人物・境遇・環境、同じ設定なのに、少しずつ違う設定の六つの世界。鏡のようにキラキラと光る未来を求め、足掻き続ける人々。合わせ鏡のようなパラレルワールドが不思議で美しい。
2016/10/26
タックン
道尾さんお得意の連作短編集。いつものごとく心理描写が短い文章の中でさらりと上手く描けてた。3つの家族の連作だけど1章1章誰かしらが亡くなってたり欠けてたりして不安で切ない感じがよくでてた。そして些細な行動や思いで人生が変わってしまう危うさと、あの時何でああしたのかという後悔みたいなものがはかなくそして美しく描けてた。題名も秀逸。さらりと読めるのでお勧めの1冊。まだ理解できないとこがあるから再読必要かな。
2014/01/04
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