東京自叙伝
東京自叙伝 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
6人の語り手が幕末から現代(3.11大震災)まで、順次東京に起こったことを語り継いで行く。彼ら同志の関係は輪廻転生のようでもあり、また時には同時に存在していることからすれば、そうでもなし。また、6人が登場する割にはその語りは平板である。彼らはそもそもが個であるとともに全一でもある。なにしろ実態は東京の地霊なのであるから。そこで語られるのはもっぱら東京の裏面史であり、その要所要所に姿を変えた地霊が深く関わっていたというのである。事件そのものに目新しさがなく、語りも平板であるために単調さは免れない。
2023/02/01
藤枝梅安
「神器ー軍艦橿原殺人事件」のラインの作品。「東京の地霊」が様々な人物になって、江戸から東京の歴史を物語る。「欲望と衝動」によって動いていく鼠の如く、東京とそこに住む人々も欲望と衝動のままに破滅へと向かっている様子が描かれている。史実を基に、人名は少し変えて、いかにも明治あたりの生まれの人のような語り口。「〇〇事件、あれも私です。」と悪びれずに断言するところが政治家や大実業家のようである。一つ一つの小さな意思が集まり絡まって不気味な動きに変わっていき、「歴史」となっていく様子を巧みに表現している。
2014/11/15
おか
いやぁ 壮大な人間への皮肉が幕末から2013年迄を東京を中心に描かれている。描き方が又特殊!!!裏社会の人間を中心に描いているが 読んでいて気分が悪くなる位 人間の嫌な部分を抉り出している。途中で やめたくなったけど 頑張った!人間とは 何と愚かな生き物なのであろう そして 破滅への道を自ら選んで生きている という作者の意図は充分伝わったが それでも 私は救いを求めている、、、人間への警鐘としては 充分その役割は果たしているが 辛すぎる読書であった。
2018/10/10
山田太郎
あんまり期待せずに読んだらことのほか面白かった。けっこう無責任な主人公というか語り手が笑わせる。この作者のユーモア感は好きだな。
2015/10/21
いたろう
すごい小説だ。一人の人間に複数の人格が宿る多重人格ではなく、複数の人間が一つの人格で結ばれる「多在人格」とでもいうべき状態。「東京の地霊」である人格は、引き継がれ、拡散され、同時に複数存在する。江戸の大火、富士山の噴火、関東大震災、空襲、原爆、戦後の混乱・・・、江戸・東京を中心にした災厄の歴史。バブル崩壊、地下鉄サリン、新宿雑居ビル放火事件、秋葉原無差別殺傷事件。東京の災禍は続く。そして3.11――。これは、原発事故を既に過去のこととして葬り去ろうとしている東京を始めとする日本人への強烈なメッセージ。
2015/02/07
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