怪談
怪談 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
このタイトルのもとに7つの短篇を収録。いずれも秀逸だが、語りがくどい「還る」と、怪が直接登場する「同居人」、「ぬばたまの」は私の好みからは少し外れる。怪は姿を現すことなく、その気配を漂わせるのこそが怪談の最大の妙味ではあるまいか。小池真理子の真骨頂は、こうした怪談にこそあるのではないかという気になるほど出色の小説群。日本の伝統的なモノガタリは、本来「モノ」(姿の見えないもの)を「カタル」ものであった。その意味では本書は物語文学の本流を継承するものである。お薦め!
2024/03/30
takaC
明々後日から豪州旅行だけど直前の今帰省中で出国前に行けるのは長野献血ルームだけということでそこに予約して成分献血に行った献血最中に軋まないベッドの上で読了。併読してる『死の島』とは違った感じだけどこれまた怖い。
2018/08/13
machi☺︎︎゛
こちら側の人とあちら側の人の交わる所の世界を書いた7編の短編。ただ怖いだけの怪談とは違い小池真理子さんが書くとこんな風に幻想的になるのか、と感心しながら読んだ。あとがきの小池真理子さんの死に対する思いを読んで、それが基にあるから生まれる話なんだな。と納得。でも雨の日にこんな本を読んでいると何か得体も知れない気配を感じ思わず周りを見てしまった。
2021/05/27
風眠
おどろおどろしい怪談とは違う。生者と死者が邂逅する、透明な切なさと懐かしさ。ひとつひとつの物語の完成度はもちろん素晴らしいが、それ以上に行間から匂い立ってくるような気配のようなものが美しいのである。流麗な文章が書けるだけではきっと書けない、行間の空白から立ち上ってくる美しさ。幻想的で、色気があり、妖しさとなって、この世の私を魅了する。現象に対する答えは無い、けれど、白とも黒ともつかないこの世とあの世の狭間はきっとある。内田百閒を彷彿させるような、けれどもこれは小池真理子の力量が研ぎ澄まされた短篇集である。
2014/09/05
藤月はな(灯れ松明の火)
怪異に条理はない。そして怪談とは本来、そういうものだと私は思う。ただ、それに何かを見出してしまうのは、人間なのだ。何故なら生きている者は既に去ってしまった者の想いを知りたくとも、それが自分の想像の領域を出られない事を知っている。それでも想いを馳せずにいられないのは情があるから。その情があるからこそ、懐かしい恐怖へと変わっていく。「岬へ」は自分の男性との向き合い方を省みて密かに震えました。「カーディガン」は早苗は本当にいたのかが何も明かされないのと、ジワジワと自我を早苗として塗り替えるような描写に静かに慄く
2018/07/02
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